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棚橋和博音楽コラム 僕にとってのロック名盤八十八作品

【第21回】『エリック・カズ:41年目の再会』エリック・カズ

2015年、驚きの41年振りに新作をリリースしたエリック・カズ。それが、学生時代の頃を思い出すノスタルジー感満載の傑作でした。

  • 情報掲載日:2019.03.19
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。
『エリック・カズ:41年目の再会』
『エリック・カズ:41年目の再会』

「何をしに大学に行ったのか?」と問われると、
行かせてくれた親には大変申し訳ないのですが、
僕の場合、「好きなアーティストやバンドのライヴを、これでもかというほど観に行く」。もう、これしかありませんでした。

小6の時、ラジオをきっかけにロックやポップスを聴き始めました。
そして、その音楽はどんな顔をした、どんな人達が奏でているのか?
何を考えて、何を唄いたくてその曲を作ったのか等々を音楽雑誌を通して知る。
大袈裟ですが、その喜びは僕の聴き手人生そのものだと言えます。
また、音楽と共に雑誌好き人生のスタートでもあります。
音楽雑誌を読み漁ると、例えば、「レッド・ツェペリン、熱狂の来日公演!!」なんて
記事が掲載されているわけです。でも、新潟という地方で暮らしている中学生頃の僕にとっては、
「いいなぁ」との羨ましい思いは勿論ですが、「でも、無理だよなぁ」と、諦めるしかなかったのです。
そんなもやもやをずーっと抱いていました。
高校生にもなると、「ひょっとして大学に行ったら……」なんて妄想を抱くわけです。
まさか親にはそんなことは言えず、「やっぱり、一応は大学に行っといた方が、将来を考えると…」
なんて、真面目そうな話を父にし、それで行かせてもらえることになったわけです。
中学、高校と、音楽まみれの生活をしていたわけですから、勉強なんてそれほどしてないわけで…それでも何とか滑り込ませてもらえた大学が僕にもありました。
勿論、その大学が関東圏じゃないと意味がありません。
だって、日本武道館、中野サンプラザ、渋谷公会堂あたりにちょくちょく行かなきゃいけないわけですから(苦笑)。
以前にもこのコラムで書かせて頂きましたが、暮らす場所は、大学に近いということは勿論、都内のそれらのホールに割と容易に行ける場所が必然だったのです。
千葉の柏は、そういうった意味ではベストでした。
大学に行くのとバイトの両方は我ながら頑張りました。
それと、しょっちゅうコンサートに行くのも頑張りました(笑)。
いつかここで書きたいと思いますが、1976年から1980年の頃ですから、
凄い人達がわんさか来日してくれましたから、もう、興奮の日々でした。
最近、映画が大ヒットしたクイーンですが、僕はそれほど興味はなかったのですが、当時お付き合いをさせてもらっていた彼女が大のクイーンのファンでしたから、お伴をするという感じで二度ほど武道館で彼らを観ました。
想像していた以上の素晴らしさでしたから、今となっては、観といて良かったなぁと思います。その彼女に感謝しています。

さて、今日書く、名盤のこと…忘れそうになりましたが…
僕が大学当時、音楽雑誌、「ミュージックマガジン」で、
「全然売れなくて…すぐに廃盤。それを復刻!!」っていうレコード会社の企画で、名盤復刻的な特集をよくやっていました。
大体がアメリカのシンガーソングライターものが多かったのですが、その雑誌を読み、気になったものを買って聴くと、「何でこれが売れなかったの?」と思う作品が幾つかありました。

その中で最も印象に残っているのが、エリック・カズというアーティストです。

ボニー・レイットという女性シンガーに提供した『ラヴ・ハズ・ノー・プライド』という曲が有名ですが、
彼が70年代にリリースした『イフ・ユアー・ロンリー』『カル・デ・サック』という2作はそんなことがきっかけで出会って良く聴いたアルバムです。

『イフ・ユアー・ロンリー』
『イフ・ユアー・ロンリー』
『カル・デ・サック』
『カル・デ・サック』

簡単に言ってしまえば、これほど優しい歌声はあるか?
と思えるほどの、それほどテクニカルではない味のあるヴォーカルです。
でも、マニアックではなく妙な仕掛けもほとんどない、作風です。
かと言ってヒットチャートに登場するとは到底思えない売れ線を狙ったものでもありません。
彼はその後、アメリカン・フライヤーなるバンドを組み、2枚のアルバムをリリースします。
ファーストの『アメリカン・フライヤー』は、あの、ビートルズを手掛けた、
あまりにも有名なジョージ・マーティンがプロデュースをしたアルバムです。

『アメリカン・フライヤー』
『アメリカン・フライヤー』

全8曲収録。ほとんどの曲がピアノの弾き語りという感じの作品で、
70年代にリリースした2枚のアルバムの質感そのままに…いや、
むしろさらにシンプルになったと言っていいと思います。
収録曲は8曲。まるでミニ・アルバムか? とすら思ってしまう、30分ちょっとのアルバムです。
今の時代、ちょっと損をした感じになってしまう収録時間ですが、いやいや、これで充分。
何たって、41年振りにリリースしようとしたアルバムに8曲ですから、
まさに、厳選したということでしょう。
僕なんかのおっさん世代には、どうしてもアナログレコードの片面15~18分というのが身に沁みついています。
集中して音楽を楽しんで聴くというのは、70分なんていうのは長すぎるんです。
そう思わせてくれた、エリック・カズの新作でした。

一曲目の『ジャスト・ワナ・ビー・ホーム』を聴くと、
何だか疲れた心身が、ちょっと和らぐというか、そんな気持ちになります。
でも、BGMで心地良いというものではないのがミソ。
70年代にリリースした『イフ・ユアー・ロンリー』を大学の頃に聴いていた、あの当時の日々の生活を思い出させてくれる、そんな新作でした。

新作を聴いてノスタルジックな気持ちになれるなんて素晴らしいことです。

大学時代、千葉の柏で暮らしていた日々。本当に、何気ないあの頃の日常を
思い出し、何だか切なく温かい気持ちになりました。

ありがとう、エリック!!

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