長谷川さん_ジャック左長谷川さん_ジャック左 長谷川さん_ジャックスマホ
  1. Home
  2. スペシャル
  3. 2017年7月。すでに監督勇退を発表し、「最後の夏」に挑んだ2017年初夏のイ…

為せば成る ─ 日本文理高野球部 大井道夫総監督 かく語りき

2017年7月。すでに監督勇退を発表し、「最後の夏」に挑んだ2017年初夏のインタビューを公開

高校野球ファンへ捧ぐ 日本文理高校 大井道夫総監督 ロングインタビュー[連載第3回/全9回(予定)]

  • 情報掲載日:2020.10.07
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

 

すでに監督勇退を発表し、「最後の夏」に挑んだ2017年初夏のインタビュー

弊社発行のタウン情報誌『月刊にいがた』で過去に掲載したインタビューを復刻──それも当時の発言をすべて活字化して皆さんにご覧いただくスペシャルな企画。第1回・第2回では、あの伝説となった夏の甲子園準優勝直後のインタビューをご覧いただいたわけですが、今回の(第3回)と次回では、日本文理高校野球部の監督を勇退すると発表して挑んだ2017年シーズンの初夏に行なったインタビューをお届けします。

収録したのは、2017年7月3日。ちょうど「監督最後の夏」の新潟県予選が始まる直前、当時のチーム状況やラストサマーに向かう大井監督の心境をうかがった内容になっています。1時間弱というインタビューでしたが、飯塚悟史(現・横浜DeNAベイスターズ)や鈴木裕太(現・東京ヤクルトスワローズ)など、日本文理高校卒のプロ野球選手の名前も出てきたり、そもそも監督を勇退するいきさつは何だったのかという貴重な話も語られています。

大井監督にとって「最後の夏」の始まりをご自身がどんな思いで見据えていたのか──それを自ら語ってくれたロングインタビュー。今回もぜひお楽しみください!

●写真提供・新潟野球ドットコム
●聞き手・笹川清彦/原稿構成・棚橋和博(ジョイフルタウン)

(勇退することは)私以上に子どもらが感じているよね。

横浜DeNAベイスターズ・飯塚悟史投手
横浜DeNAベイスターズ・飯塚悟史投手

──(横浜DeNAベイスターズの)飯塚(悟史)選手が明日、阪神戦で先発登板をしそうですね(2017年7月4日・ハードオフ・エコスタジアムでの阪神戦は雨天のため中止となった)。

そうなんだよねぇ(笑)…明日、天気はどうかな?実は昨日の夜、飯塚から電話が来たんだよ。「監督、明日の試合で先発します!」ってね。で、「調子はどうだ?」って聞いたら、「今のところ問題ないです!」って。で、(俺は)「気負うなよ!」と伝えたんだけどね。

──ファームではここ何試合か凄くいいピッチングをしていますし、ここ一ケ月は特に調子が良さそうですよ。

ああ、そうらしいね。で、「俺は今、現役の子どもらのアレ(第99回全国高校野球選手権・新潟大会)が近いから見に行くわけにはいかないけど、ОBとかみんな、まとまって応援に行くらしいぞ」って言ったら、「そうですか!」って言ってたよ。

──監督、もし飯塚選手が勝ち投手にでもなれば、それは日本文理高校への何よりものエールになりますよね(笑)?

そりゃそうだねぇ。現役の子どもらも、それは感じるところがあるんじゃないかな。

──そうですよね。で、開会式まであと5日。新潟県大会がいよいよ始まります。監督ご自身も緊張感が高まっているのではないでしょうか?

うん、そうだね。私が今年の夏で降りるってことだからね。

──はい、勇退されますね?

そう、それを私以上に子どもらが感じているよね。だからあまりそういうことでプレッシャーをかけないようにと──正直言って子どもらには直接(今夏で降りるということを)言ってないの。でも、俺が言わなくたって、彼らも周りから言われて知っているからね。

──そうでしょうね。で、現在のチーム状況と言いますか、仕上がり具合はいかがでしょうか?

うん、悪くないと思う。ただね、このところ試験でね、一週間ばかり自主練になっているのよ。その点がちょっと心配なんだ。

──昨日、練習試合はやられたんですか?

うん、練習試合はやった。やったけどね、そんなに練習してないからしょうがないけど、俺はやれたってことだけで良かったと思っていてね。成績は…昨日は良くなかったな。でもまぁ、使いたい選手が結構いい結果を出しているので、そういう点だけはいいなと思っているね。特に2年のピッチャーの鈴木(裕太)だね。このところ彼に3試合ばかり練習試合で投げさせたけど、もうすべて──3試合ともいいね。

──(一時は調子を落としていた)彼は戻りましたか?

そう、試合で使える形には戻ったね。でも100%じゃない。あの子の力からしたら70パーセント位かな。それでもやっぱり全然打たれないもん。

──もともと140キロ後半を投げる期待のピッチャーですからね。

そうそう。でも、昨日なんかはまだ140キロまではいってないんじゃないかな。それでも(生きた)ピッチャーのボールだから。手元にきて(伸びる)。おとといは6イニング投げさせてヒットは1本くらい。昨日は3イニング投げてヒットはゼロかな。

──連投させたんですね?

そう、連投させた。で、ちゃんと結果を残してくれたので、まぁ、いいよね。

鈴木裕太投手
鈴木裕太投手
稲垣豪人投手
稲垣豪人投手
新谷晴投手
新谷晴投手

──なるほど。で、まず今年のチームの話からお聞きたいんですが、春の大会は新谷(晴)くんと稲垣(豪人)くんの継投で勝ち進む試合が多かったんですが、そこに鈴木くんが入ると。で、昨秋エースナンバーをつけていた西村(勇輝)くんもいるわけで──ピッチャーの起用がどうなるか注目ですが?

うん、一応今大会はピッチャーを5人(ベンチメンバーに)入れているのよ。今、名前の挙がった4人以外にも原田(航汰)っていう…。

──ああ、春の決勝で投げたピッチャーですね?

そうそう。だから俺はね、主軸は稲垣──彼がエースとして投げる。

──背番号1番をつけると?

そう、そこに今挙げたピッチャーたち──新谷、西村、鈴木、原田が絡んでいく。それはその状況に応じて使っていきたいと。

──みんな高いポテンシャルを持った好投手ばかりですからね。そういう意味でピッチングスタッフは充実した戦力が揃ったと監督は捉えているということですね?

うん、そうだね。日程的に連戦になるのが準決と決勝だけ。あとは間隔が空くんですよ。天気がどうなるか。今年の大会は凄く暑くなるという予想もあるし…そういう点で心配なのは健康面だね。ピッチャーを5人入れているのも、そういう点も考慮してのこと。こっちが期待していても体調が突然悪くなったりすることもあるわけ。それは分からない。できればそういうことがないようにと思っているけどね。だからそこはチームとして万が一のことを考えて臨みたいっていうさ。過去にもいろんなことがあった。エースが急に日射病になって脱水症状を起こしちゃったりとかしてさ。もうね、何をやってんだ? っていうピッチング。後で聞くと本人は全然覚えていない──2~3回以降は覚えてないっていう…。

──本人は投げたいという一心でしょうからね?

そう、そういう点で最悪のケースも考えて。まぁ、5人いれば何とかそういう事態も回避できるだろうなと。で、あとは打線の方でカバーすると。

──その打線の方は日本文理高校最大の特徴であり、強力打線が伝統的な看板です。で、今年も“つなぐ打線”は健在ですよね?

まぁ、打ってもらわないと困るなぁ(苦笑)…ウチの野球は。

西村勇輝投手
西村勇輝投手
原田航太投手
原田航太投手

最後の夏は甲子園に連れて行こうと、子どもらが思ってくれている。

──春の大会もそうで、新潟県大会では負けてはいません。抜きんでている印象ですが?

うん…でも、相手のピッチャー次第だな。やっぱり春と違って夏はピッチャーもそこに向けて調整してくるわけだからね。いいピッチングをされた時にどういうバッティングができるか。ウチの場合、試合になると相手チームは極端に深く守るんだよ。外野にいくら大きい当たりを打ってもフライはみんな捕られちゃう。だからそういうことも考慮してフライを打たない。そのことを各自が考えてそういう練習をしていますけどね。

──低く、強い打球を打つと?

そうそう、極端に言うとライナーだよね。そういうことを心がける。スタンドに入らない限り、フライを上げたらまず無理だ。だってプロが守っている以上に深く守っているんだから(苦笑)。

──(笑)フェンスにはりついていますよね?

そう、はりついている。アレじゃあね、どんだけ大きなフライを打ったって外野の間は抜けません。

──そのライナー性の打球を打つということが、結果的に日本文理ならではの“つなぐ打線”になっていくんでしょうね?

うん、まさにそういう形で打ってつなぎ、で、その次にと──それがウチの打線の特徴になっていく。そうすれば当然大量点も望めるわけでね。

──そういう打線でつなぎ、さらに中軸を打つ川村(啓真)くんや松木(一真)くんにはドカーンという一発もあります。そういう意味で打線は監督も安心して見ていられるのではと?

いやいや、こればっかりは安心はできないんだよなぁ(苦笑)…特にピッチャー経験をしている監督はみんなそうみたいだよね。打線は水物ってい言うけどホントでさ。相手ピッチャーの調子いかんだからね。それがあるから、打つ、打つと言っても、それはわからないよね。

──確かに春の大会では糸魚川白嶺と1対0で辛勝という試合がありましたからね?

そうそう! そういうことがあるんだから。だから、とにかく今言ったように、どういう形であれつなぐ。相手のエラーでも、こっちのフォアボールでも何でもいいから──ヒットにならなくても得点できるようなことは常に考えていますよ。

川村啓真選手
川村啓真選手
松木一真選手
松木一真選手

──現チームは秋~春と県内の頂点に立っていて未だ公式戦で負けはありません。そこで夏の大会を迎えるわけですから、まさに絶対的本命です。ただ、こういう状況は日本文理でも過去、そんなに多くはありません。2009年に甲子園で準優勝した、あのチーム以来。こういう誰が見ても大本命という状況はかえってプレッシャーですか?

私はね、この間も子供たちに言ったんですよ、「この夏、(日本文理は)絶対的本命だと周りも言うし、お前たちもそう思っているだろう。横綱相撲じゃないけど、受けて立つようなことじゃダメだ。逆にこっちから攻める! そういう気持ちじゃないと思わぬ落とし穴があるよ」ってね。どんな時でも攻めろと──投げるんでも打つんでも、そして守るんでも絶対に受けるなと。すべて攻めて行けってことだよね。

──ある意味、秋や春に勝ち進んだ結果は関係ないという?

そう、関係ない。

──夏は負けたら終わりですからね?

夏はね、秋が良かったとか春の結果がどうとかは全く関係ないからね。夏っていうのは特別だからさ。特に最上級生は最後の夏だから、みんな死に物狂いでやってくるわけ。そんな中でウチが受けて立つような野球をやっていたら間違いなく足元をすくわれるからね。

──日本文理の攻めの野球の根幹がそこにある気がします。また、選手たちも、「絶対に甲子園の切符をつかんでやる!」って気持ちでいるんでしょうからね。

今の3年生は一回も甲子園に行ってないから、その思いは強いだろうね。

──はい、飯塚投手を擁した2014年の夏以来、3年、甲子園に行けていません。

うんうん、そうだねぇ。それとね、やっぱり監督最後の年の夏は甲子園に連れて行こうという思いは子どもらは持ってくれているみたいだね。それを俺が感じるだけに、何とかこの子たちを勝たせてやりたいなとね。でもね、野球をやるのは子どもたちだからね(笑)…監督が野球をやるわけじゃないからさ。

──新潟県予選を迎えるにあたり、特にマークしているチームはあるのでしょうか?

(きっぱりと)俺はない。 “夏の大会は特別”とさっき言ったように、波に乗ってくるチームが必ずいるの。力がなくても大会に入って力をつけていくというチームがいるんだよ。

──勢いに乗っていくチームですね?

そう、例えばウチが8の力があるとして。で、相手が元々は5くらいしかないチームだったとしても、その力が同じ状態になっちゃう時があるんだよ。また、ウチが6くらいしか出せない時もあるし、逆に相手が元々の力以上のものを出しちゃうこともある。こっちはそれが嫌なんだよ。そういう調子に乗ってくるチームが夏は必ずある。練習試合なんかやったらこっちがコールド勝ちしちゃうようなチームでも、いざ本番になるとそういう力が出る──一戦一戦力をつけてくるっていう。そうすると子どもっていうのは変な自信を持っちゃうんだ──「よし、行ける!」って自分の力以上のものが出てくるんだよねぇ。そういうチームは警戒しなきゃならないよね。ただ、それがどこのチームなのか、これは今の段階ではわからないわけ。始まってみないとわからない。

──なるほどね。その辺は31年間の監督生活の中で骨身にしみている部分でしょうね?

(笑)それはもう十二分に心得ているからね。

──でも、逆に日本文理も大会に入ってどんどんチームが勢いを増していく可能性もあるわけですよね?

うんうん、その可能性はありますよ。ウチだって大会で今は8なのが10以上の力を出せるようになるかもしれない。また、そうなれるよう力を引き出してあげるのが監督の役目であってさ。

本来はね、去年の秋で辞めようと思っていたのよ。

──そうですね。本当にこの大会でも活躍を期待しています。後日終わってからこの大会の振り返りを過去のいろんな思い出とともにお話を聞かせていただきます。で、ここからは、今夏で勇退される大井監督の現在の心境等について聞かせてください。まず、根本的な話なんですけど、そもそも、勇退を決められた背景には監督自身どのような思いがあったのでしょうか?

本来はね、去年(2016年)の秋で辞めようと思っていたのよ。というのは、私のひとつのポリシーじゃないけど、強いチームの時に次期監督に渡してあげたいという気持ちがあった。逆に言えば弱いチームで引き継いだらダメなんだよ。そうじゃなくたって俺の後に監督をやるっていうのは凄いプレッシャーがかかるわけだからね。負ければ、「何をやっているんだ!」って言われる。それはかわいそうでしょう。その点、今年のチームと来年のチームは間違いなく強いと思う。ひいき目じゃなくてね、第三者の立場から見てもそう思う。だからそういう強いチームで次に渡してやりたい。だから私は秋で辞めると決心したわけ。ところが、そう決心してからチーム事情が急に変わっちゃったのよ。というのはね、まずは第一に12月で海津(勇太)というコーチが──彼は私が早稲田に入れた子なんだけど、彼のお父さんから突然電話をもらったんだよ。「私の体調が悪くて…申し訳ないけど、ひとり息子を今年で返してください」と言われてね。

──要は家庭の事情ですね?

そうそう、それを言われたどうしようもない。認めざるを得ない事情だよね。さらにその後、顧問の先生や部長の体調があまりよくなくてね。医者通いをしていた。そんなことが立て続けに起きて、どうなっちゃうんだろうなぁと思ったところ、私の耳に、「海津を辞めさせたのは鈴木(嵩)だ!」って話が入ってきた。

──次期監督に内定している鈴木コーチのことですね?

そう、その鈴木が追い出したなんていうとんでもない噂が出てきてねぇ。真実じゃなくてもそういう人の噂って消そうにもなかなかできない。そんな時期に俺が辞めちゃったらさ、それこそ野球部はガタガタになるじゃない? で、「わかった。人の噂も45日だから…よーし、夏までもう一回やるよ」と、それで決心したのよ。そんなことがなければ、もう、辞めているはずなんだけどね(苦笑)…事情が事情でこうなっちゃったんだよね。それは学校側も了解しているしね。「夏までもうひと踏ん張りするか!」ってことなんだよね。で、秋からすっきりと総監督として動き始めて新監督にバトンタッチしてやれば来年も優勝を狙えるチームで戦えるからね。

──2人のピッチャーをはじめ、いい2年生がたくさんいますしね?

そう! いる。

──そういった意味でも今夏は本当にこのチームで甲子園に行きたいですね?

そうだねぇ(笑)…何とか頑張って。いや、俺が頑張ってもしょうがないんだけどさぁ(笑)。

──(笑)それは確かに…それにしても今夏は、“文理野球”であり、大井監督の野球人生の集大成になると思うんです。そんな思いが監督の中にあるのではないでしょうか?

うんうん、だからね、この頃特にいろんな人が「一緒に写真を撮ってくれ!」って言ってくれるのよ。「ユニフォーム姿の監督とぜひ!」とか「サインを下さい」とかね、そういうのが特に多いんだよね。練習試合の日でも、「監督、すみません。ちょっと写真いいですか?」って言われるのよ(笑)。そういうのがここに来て特に多いのは、みんなそういう(最後だからとの)思いなんだろうなとね。

──監督自身はそういう感覚はないんですか?

あ、俺はないよ。とにかく周りの皆さんが盛り上がっているね(苦笑)…「監督のユニフォーム姿はこれが見納めだから…」とかさ、もう、やんなっちゃうよねぇ…あっはははは(苦笑)。

(次回に続く)

●写真提供/新潟野球ドットコム


第4回「2017年「監督生活最後の夏」が開始直前に、大井監督が自ら指導論を語ってくれた」は、10月14日頃の公開予定です。

関連記事

SNS