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棚橋和博音楽コラム 僕にとってのロック名盤八十八作品

【第24回】“ジャケ買い”し、それが音とマッチしたと思える見事な作品

【音楽コラム第24回】『ホワット・ア・ビューティフル・プレイス』キャサリン・ハウ

  • 情報掲載日:2020.10.15
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。
『ホワット・ア・ビューティフル・プレイス』
『ホワット・ア・ビューティフル・プレイス』

いわゆる“ジャケ買い”し、これほど音とマッチしたと思える作品はありません。
髪の長い若い(多分)女性が右手に帽子を手にし、湖を眺めています。足元には黄色い花が咲き乱れていて、本来なら、爽やかかつ甘い香りがしてきてもいいのですが…美しいけれど、どこか湿り気があり、何だか少し暗さが漂っています。
でも、何とも言えないバランスの良い写真です。
本来、アナログ・レコードなら部屋に飾っておきたいのですが、このアルバムのオリジナルの英国原盤は相当の大枚を用意しないと手に入れることは出来ない幻の一枚です。
多分ですが、20~30万くらいはするのではないでしょうか。

このキャサリン・ハウの『ホワット・ア・ビューティフル・プレイス』を買ったのは今から十数年ほど前。リイシューされていたCDとアナログ盤の両方を購入したのですが、残念なことにアナログ盤はキャサリン・ハウのアップの写真が使われていて、このジャケットではなかったのです。
イギリスのトラッド系バンドやアーティストに興味があり、少しずつレコードを買い漁ってきました。以前もこのコラムで紹介させてもらったバンド、ヘロンなんかをきっかけに、いろいろなアーティストに巡り合いました。その中のひとりがキャサリン・ハウです。
詳しい経歴は知りませんが、ヨークシャー生まれで女優をやりながら歌も唄っていたという人です。
『ホワット・ア・ビューティフル・プレイス』は、そんなキャサリン・ハウが1971年にリリースしたデビュー作。
か細く繊細な彼女の歌声は、技術的に優れているとは言い難いですが、ビギナーズ・ラックと言ったらいいでしょうか、どこか幻想的なトータリティーを持つこのアルバムの雰囲気にピタリとマッチしています。
プロローグの語りから2曲目のクラシカルな『アップ・ノース』から心をグッと掴まれす。
物憂げな歌声は、最初にも触れましたが、ここで既にアルバム・ジャケットの世界観が重なります。
途中でインターリュードがあり、そしてラストにはエピローグと、まさにトータル作品として見事な質感を持っています。アルバムの終わりまでこの世界観が裏切られることはありません。
歌もアレンジも、見事な作品です。

『ハリー』
『ハリー』
『サイレント・マザー・ネイチャー』
『サイレント・マザー・ネイチャー』
『ドラゴンフライ・デイズ』
『ドラゴンフライ・デイズ』
『プリンセス・ストリート』
『プリンセス・ストリート』
『イングリッシュ・テイル』
『イングリッシュ・テイル』

さて、キャサリン・ハウはその後70年代に『ハリー』『サイレント・マザー・ネイチャー』『ドラゴンフライ・デイズ』と立て続けにアバムをリリースしますが、この、『ホワット・ア・ビューティフル・プレイス』を超える作品は作れていません。

その後の彼女の動向ですが、趣味さながらというか、気が向いた時にアルバムを作っています。
全て把握しているわけではありませんが、2007年に『プリンセス・ストリート』、2010年には『イングリッシュ・テイル』と割と気の向いた時にアルバムを届けてくれています。
『イングリッシュ・テイル』は、年を重ね円熟味を増した彼女の歌を聴くことが出来ます。

現在彼女は70歳。
『ホワット・ア・ビューティフル・プレイス』に映っている女性は、キャサリン・ハウ、その人だったのでしょうか。
謎です。
久々のコラム執筆がマニアックなアーティストですみません(苦笑)。

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