料理家・村山瑛子先生と番組アナウンサーが地元農産物生産者たちを訪ねて、おいしい食材と人とのつながりを紹介する『とれたて! えいっとレシピ』。
今回おじゃましたのは新潟市江南区。100年以上続く歴史をもつ伝統野菜「女池菜」を使って、村山先生がとろとろの丼レシピを作ってくれました。
まるで女池菜畑に雪が降り積もっているようなビジュアルですよね。どんなレシピかは後半で紹介。短時間で簡単に作れるので是非チェックを!
というわけで、まず村山先生と飛田アナが訪れたのは、新潟市江南区にあるJA新潟市 南部営農センター。
そこに現れたのは営農指導員の神保さん。
「おはようございます! 今日のテーマはこちらです」と手にしているのは女池菜。
村山先生・「女池菜は女池地区で100年以上続く伝統野菜なんですよ」
飛田アナ・「先生、詳しいですね。神保さんが話すことがなくなっちゃうんじゃないですか?」
神保さん・「じゃあ、もう終了で(笑)」
…なんて冗談も飛び出しましたが、さらに詳しく教えてくれました。
女池菜は明治中期に新潟市内の女池地区に伝わり、そこから鳥屋野地区を中心に生産者が増えていったそうです。
ところで神保さんは二種類のお皿を持っています。ともにおひたしのように見えますが…。
飛田アナ・「この二皿には何か違いがあるんですね?」
村山先生・「食べたら分かりますか?」
神保さん・「分かりやすいですよ。村山先生は女池菜に詳しいと聞いていたので、どれくらい知っているかと思いまして」
村山先生・「え〜。コワい!」
そして食べ比べする直前、お皿を撮影している「えいっとレシピ」カメラマンの様子を見ていた神保さんが思わず…。
神保さん・「こっちがハウス(栽培)ですね」
…言っちゃった!! これには一同大爆笑。
「すみません! 取材は初めてなもので」と神保さん。正直な方です。
神保さん・「では聞いていないことにして…」
飛田アナ・「大丈夫です。聞いてないです(笑)」
村山先生・「じゃあ、ハウスから食べますか!(笑)」
実はこの二皿は露地栽培とハウス栽培。とはいえ味がどう違うかは、実際に食べてみないと分かりません。
村山先生・「おいしい! シャキシャキしていて結構甘いですね」
飛田アナ・「このコクというか独特な風味がいいですね」
続いてもう一方を口にする二人。
飛田アナ・「こっちの方がコクが深いというか、独特な苦味のなかに女池菜らしい風味がより強いと思いました」
村山先生・「香りもいいし、両方おいしいです」
何の食べ比べなのか分かってしまったので、妙な空気が流れている現場(笑)。
神保さん・「(露地栽培とハウス栽培の風味の違いは)だいたいお二人とも、いいところを突いていると思うので、実際に生産者のもとに行ってみましょうか」
露地栽培とハウス栽培の風味の違いを明かさないまま、移動することになりました。
女池菜は茎と葉どちらがメイン?
一行が訪れたのは新潟市中央区。生産者の早川さんを訪ねました。
村山先生・「女池菜作っていますね〜!」
飛田アナ・「住宅街に畑が広がっているんですね」
早川さん・「よろしくお願いします」
私たちの生活に身近な場所で女池菜は作られているんですね。
飛田アナ・「茎がしっかりしていますね。こんなにシャキッとしていて!」
早川さん・「そうですね。トンネルをかけて雪風になるべく当たらないようにしていますからね」
村山先生・「寒い季節にしっかり育つのが女池菜ですからね」
飛田アナ・「僕もこんな風に育ちたかったです(笑)。どうしても人間は曲がったり、くねったりしますからね」
ちなみに今年の出来は、2月上旬に気温が下がったことで、甘みが増しておいしくなっているという。2月下旬から3月初旬はベストシーズンで収穫真っ最中。
ふと足元をみると、葉がたくさん落ちています。
村山先生・「この倒れた女池菜たちは?」
早川さん・「これは古葉といって、おいしくない部分なので捨てちゃうんです」
「とてもたくさん古葉を取るんですよ」と詳しい村山先生。実際に選別してみることにしました。
村山先生・「私はやったことがあるから飛田さん、どうぞ」
飛田アナ・「先輩風吹かせてますね(笑)」
というわけで飛田アナが収穫と選別を体験。
「私の感覚だと…せいぜいこんなくらいじゃないですか?(下写真)」と早川さんに聞いてみたところ…。
早川さん・「全然ダメですね(笑)」
「この辺はダメで…」と、どんどん捨てていく早川さん。その大胆な動きを見ながら「えっ!? え〜!?」と驚く飛田アナ。
商品として世に出るには、これくらいまで捨てるそうです(下写真)
村山先生・「ちっちゃい!」
飛田アナ・「え〜、こんだけ〜!?」
早川さん・「ここまでやって、やわらかくておいしい女池菜が食べられるんですよ」
おおよそ半分くらいまで小さくなった女池菜を見て、「犠牲が多過ぎじゃないですか。全然この辺も食べられますよ」という飛田アナのコメントに思わず納得。
しかし、一見食べられそうな部分も筋があって固かったり、苦みや灰汁(アク)があったりするので、商品として出荷しないそうです。
おいしい女池菜づくりへのこだわりが深いですね。
村山先生・「作っている側として、もったいないなぁって思うことはありますか? この葉はつけておこうかな?とか」
早川さん・「そうすると女池菜ブランドが傷ついてしまいますからね」
飛田アナ・「プロですね!」
早川さんをはじめ女池菜生産者さんの皆さんが、そのこだわりを共有しているそうです。
村山先生・「神保さんも指導されるんですか? もう少し葉を取ってとか?」
神保さん・「そんな大それたことは言いませんが、長さや重さ、本数など決められた規格はあります。さらに虫食いがあったり、つぼみがあるのもダメなんです」
飛田アナ・「品質に関しては神保さんも厳しいんですね」
飛田アナ・「ところで神保さん、冒頭のモヤモヤとした食べ比べクイズの答えを伺いたいのですが?」
神保さん・「はい。実は露地栽培の方がハウス栽培よりも苦味と甘味が濃厚です。ねばりがあったと思うんですが、あれが甘味になるんです」
早川さん・「基本的に女池菜は露地栽培です。稲の育苗で余ったハウスがもったいないから作ろうということで栽培していますが、やっぱり露地栽培がおいしいですよ」
寒さに当たるほど女池菜は甘く、風味がよくなっていくそうです。
村山先生・「でも、新潟の冬って作業が大変ですよね?」
早川さん・「例年なら雪退けをしながら作業しますが、今年は雪が少ないのでいいですね」
女池菜の生産で最も気を遣うのが肥料。タイミングや与える量が難しく、気温によって左右される。
今年のように温かい日が多いと、予想以上に伸びてしまうなど毎年課題があるんだとか。
…と、ここで「そういえば早川さんはアメリカ帰りなんですよね」と思い出した村山先生。
早川アナ・「ビジネスとしての農業を学んできました」
飛田アナ・「どんな作物を学んできたんですか?」
早川さん・「有機農業を学び、野菜や果樹などいろいろやりましたよ。今後いかしていけたらと思っています」
アメリカでは個人名や農場名をブラントとして売っていることもあり、やはり品質へのこだわりは絶対だそうです。
そして、女池菜のおいしさについて、なるほど! と思わせる情報も教えてくれました。
早川さん・「女池菜は、とう菜の仲間なんです。「とう」は茎のことで、花を咲かせる茎の部分がおいしいことから「とう菜」と言います。よく「冬菜」って書いてあることがありますが厳密には間違いなんです。「とう」に甘味が蓄えられていて、葉よりも茎がメインの野菜です」
飛田アナ・「へ〜ッ!」
村山先生・「葉も十分おいしいですけどね」
女池菜にはいくつか茎があるが、花を咲かせる真ん中の茎が一番おいしいそうです。直売所やスーパーなどで選ぶときは、ここが長いものを選ぶとよいそうですよ。
また、女池菜とは、この地で生産しているから…というよりも、そもそも女池菜という種(品種)があり、生産者たちが種を取って翌年植える「自家採取」を100年以上やり続けているそうです。
飛田アナ・「本当に自分たちで守っているんですね。うっかりして今年種を取るのを忘れたら、来年作れなくなって大変ですね」
村山先生・「この地域もどんどん新しい家が建っていますが、生産量はどうなんですか?」
神保さん・「残念ながら減ってきているんです。出荷量はピークの半分近くになりました」
女池菜づくりの大変さや課題を聞いたところで、早川さんと神保さんの関係についても伺いました。
早川さん・「僕が収農したときから神保さんがこの地区を担当していました。プライベートで魚釣りに行ったり遊んだりしているから、仕事でも遠慮なく言ったり聞いたりできるので、とても信頼しています」
神保さん・「ありがとうございます」
では、神保さんにとって早川さんは?
神保さん・「見た目から人当たりが柔らかくて誰からも好かれる方ですし、アメリカで生活していた経験もあるので、自己主張や信念をしっかり持ったストイックの方ですね。たから女池菜の品質も素晴らしいです」
さて、いよいよレシピづくり。どんな料理をご希望なのでしょうか?
早川さん・「とう(茎)がおいしいので、それをいかした料理をお願いしたいですね」
神保さん・「今日の料理で女池菜の今後が決まってきますので、ぜひ作りやすくておいしい料理をお願いします」
村山先生・「え〜(笑)。分かりました。頑張ります」
農産物直売所「キラキラマーケット」でレシピに使う食材を購入
広くて明るい店内には、さまざまな生産者さんの農作物がいっぱい!
村山先生・「いろいろな食材がありますね」
飛田アナ・「見ているだけで楽しいですね!」
そして早川さんの女池菜を発見!
「A品しか出荷しない」「女池菜上級者は茎を見る!」など、手づくりのポップやポスターがたくさん貼り出されていました。
そこに、なんと女池菜レシピのチラシを発見!
村山先生・「こんな風にレシピもあるんですね。じゃあ今回はこのなかから(笑)」
飛田アナ・「いやいやいやいや!」
…とおどける先生。とはいえ、こんな風に店頭にレシピ情報があるとうれしいですよね。
必要な食材を探す最中、さまざまな生産者の農作物を眺めながら楽しそうな村山先生と飛田アナでした。
そしていよいよレシピづくりへ。
雪の下で耐え忍ぶ女池菜を表現したような
美しい丼レシピ
飛田アナ・「では先生! 女池菜を使ったレシピを教えてください!」
村山先生・「はい! 『女池菜の雪下丼』を作ってみようと思います!」
「雪…、下…、どんぶり…。いいですね! 雪の下に耐えた女池菜がね」と飛田アナの期待も高まりました。
村山先生・「雪の下でたくましく育っていた女池菜が印象的だったので、今回レシピとして表現してみようと思いました」
というわけでレシピはこちら!
女池菜の雪下丼
●材料(2人分)
女池菜…1/3袋
絹ごし豆腐…1/2丁
卵白…2個分
無調整豆乳…50ml(A)
ホタテ缶…小一缶(A)
中華だし…150ml(顆粒だしを小さじ1/2溶いたもの・A)
片栗粉…大さじ1(A)
塩…1/4〜1/3(A)
白こしょう…適量
ごま油…大さじ1
●作り方
(1).女池菜を3cm幅に切る。フライパンにごま油を熱して女池菜に少し焼き色がつくように焼く。しっかりめに塩(分量外)をふるって取り出す。
(2).(1)のフライパンをさっと洗い、(A)を入れる。火にかけてとろみがつくまでかき混ぜ続け、豆腐を入れて二分煮る。
(3).よく溶いた卵白を流して、卵白がふわっとなったら火を止める。
(4).丼にごはんをよそい、(1)の女池菜をのせて(3)をかけて完成。
※彩りで塩ゆでして刻んだ女池菜にごま油、ごま、塩で味付けしたものをのせる。
今回の調理に掛かった時間は、わずか15分程度。時間が少ないときでも作れそうですし、とても簡単。
ちなみに卵白を使った際に残った卵黄は、塩ゆでした女池菜にのせて、かつおぶしと醤油をかけるだけでおいしい一品になるそうです。
さて、いよいよ試食タイム!
沈黙から始まった試食タイム。その理由とは…
女池菜生産者の早川さんと、JA新潟市南部営農センター・営農指導員の神保さんを再び迎えて試食がスタート。
村山先生・「おまたせしました〜! では先生、メニューの紹介をお願いします」
飛田アナ・「はい! 『女池菜の雪下丼』です」
神保さん・「・・・」
早川さん・「・・・」
・・・沈黙。見た目もきれいな丼なのにナゼ?
村山先生・「以前、雪の下に女池菜が埋まっている様子を見たのですが、そのなかから力強く出てきたのがとても印象的だったので、白いあんをかけてみました」
飛田アナ・「ちゃんと女池菜が入ってますから大丈夫ですよ!」
早川さん・「あっ! 中に入っているんですね。失礼しました(笑)」
なるほど! 沈黙の理由は、“女池菜はあんかけの上にのっているだけ?”と勘違いしたからでした。
「たっぷり入っているんですね。しっかり茎のところを使っていますね」と安心した早川さん。早速試食してみると…。
早川さん・「女池菜の食感がシャキシャキしていて、すごく味があっておいしいです」
神保さん・「おいしいですね。実は今日は風邪気味で体調があまりよくなかったんですけど、これなら2〜3杯ペロリといけそうですね」
女池菜のコクと豆腐のあっさりとした味わいが相性抜群。
すると「実はこれに合うのが、先ほどおねだりしておばちゃんからもらってきた漬物なんです」と村山先生。
女池菜畑での取材途中に、早川さんのお母さんに声を掛けていたんですね。
「サクサク」と音をたてながら、おいしそうに食べる飛田アナ。
飛田アナ・「生姜、昆布、女池菜の旨味がいいですね。茎の苦味もまろやかになってね」
村山先生・「どんぶりに合いますよね」
早川さんは女池菜を毎日食べるそうですが、食べ方はもっぱらおひたしだそうです。
「毎日料理を変えるのは大変ですし、“そろそろ甘くなってきたな”とか素材本来の味をチェックできるので、おひたしにしています」と早川さん。
ご自身が作った女池菜の風味の変化を、日々ご自身で確認しているなんてさすがですね。
飛田アナ・「改めて今回の料理はいかがでしたか?」
早川さん・「先生が作る料理はやっぱりおいしいですね。さすがプロです。見た目もきれいですし。最初は言われるまで、中に女池菜がたくさん入ってるのが分からなかったんですけどね(笑)」
村山先生・「不思議な顔をされてましたもんね。“あれ? 女池菜少ない!”って(笑)」
「素材本来の味が楽しめるし、丼ものなのでお腹も満たされていいですね」と神保さんも満足。
最後に、改めて早川さんが教えてくれましたが、女池菜は種からできていて、外部の人間は入手できない“門外不出のブランド種”なんだそうです。
自分たちで厳密に管理して種を守っているんですね。
早川さん・「キャベツと白菜も同じアブラナ科なんですけど、花が咲いた際、花粉が飛んでこないように防虫ネットを張ったり気を遣いますね」
近年、地元の地名がついたブランド菜が出てきているが、女池菜はまさにその“はしり”ともいえる存在。
早川さん・「僕の上の上の世代の方々が頑張ってブランドを作り上げましたからね」
飛田アナ・「それが現在まで継承されているんですね。責任重大ですね、神保さん」
神保さん・「はい。早川さんや生産者の皆さんと一緒に頑張っていきたいと思っています」
加えて、「2月下旬から3月にかけてさらに旬となってきますので、ぜひご購入よろしくお願いします」とバッチリカメラ目線で語ってくれた神保さん。
営農指導員らしい頼もしい一面を見せてくれました。
飛田アナ・「これからも女池菜は盛り上がっていきそうですね」
村山先生・「早川さんは今まで登場された方々のなかでも特に若い生産者なので、アメリカで培った知識で100年以上続く伝統を持つ女池菜をどのように進化させていくか楽しみですね」
今後、生産者が少しずつ減っていくことが予想されるなか、どうやってこの伝統野菜を発展させていくかが課題とのこと。
「子どもたちや次の世代にも喜んで食べてもらえるように頑張りたいですね」と早川さん。
今回のレシピなら世代に関係なく受け入れられそうですね。
※次回の「とれたて! えいっとレシピ“くらしに笑顔を、食卓に新潟の恵みを”」は3月28日(土)放送予定。
注目情報【「女池菜入り野菜セット」のプレゼントもあり!】
●JA新潟市より「女池菜入り野菜セット」を5名様にプレゼント! 詳しくは下記「スマイルスタジアム」WEBサイトのプレゼントページへ。
●新潟県産の食材をメインに、グリル料理とスイーツが楽しめる「カフェ&グリルみのりみのる」では、現在『女池菜のおひたし』(600円)を提供中。
寒さに耐えることで甘みを増した女池菜を引き立てるよう、出汁をかけて提供している。
提供期間は2020年3月27日(金)まで。
カフェ&グリル みのりみのる
新潟県新潟市中央区天神1-12-7 LEXN(レクスン)2ビル・1F
tel.025-256-8845
営業時間11:00〜23:00
NST新潟総合テレビ「スマイルスタジアム」番組ホームページ
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