もうすぐクリスマスですねぇ。
今年はコロナ禍でいつものクリスマスとは異なり、自宅で過ごす“巣ごもりクリスマス”ということでケーキなんかは例年より高いものが売れているようですねぇ。
さて、その世代なりのクリスマスへの思いというものがあるとは思いますが、特に我々の世代──昭和という時代に小学生だった頃のクリスマスというのは、アメリカへの憧れそのものという感じで何もかもがキラキラしていました。勿論、個人的な感想ですけどね。
今は見かけなくなりましたが、その当時はアメリカから買い付け、日本のテレビで放送していた向こうのドラマがありました。
代表的なところで言えば『奥様は魔女』、『ルーシーショー』、『パートリッジファミリー』などですが、そこに映る冷蔵庫や広いキッチンなどは、当時、六畳と四畳半の二間で暮らす典型的な日本家屋での日本の暮らしとのギャップは相当なものでした。
クリスマスシーズンともなれば、そのドラマで大きなツリーにプレゼント、見たこともないようなケーキやご馳走がズラリと並んでいました。
今は何処にもコンビニがあったり、フードロスをどうするか?
という贅沢な悩みを抱えた今の日本の暮らしは幸せなのでしょうけど、一年に一度、クリスマスを愉しみにしていた昭和の、あのわくわくした思いというのはかけがえのないものだった気がします。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、僕はそういうクリスマスへの思いもあり、気がついたらスタンダード、ロックやポップスに於けるクリスマス作品を多く集めるようになりました。
エルビス・プレスリーやナット・キング・コール、ビーチ・ボーイズ、フィル・スペクター、スモーキー・ロビンソン、ボブ・ディラン等々多くのクリスマス定番作品があります。
11月ともなれば、それらの作品を少しずつ取り出して聴いていますが、そんな中でもここ十数年、最も聴いているのがスフィアン・スティーヴンスというシンガーソングライターのクリスマス作品です。
彼の作品を聴き始めたのは随分前ですが、2015年にリリースした『キャリー・アンド・ローウェル』の大ヒットで、米インディシーンの重要人物と言われるようになりました。
繊細な声質と、独特な刹那感を持ったオリジナリティ溢れるアレンジ力。
カントリーくさくなくバンジョーやトラッド系楽器を取り入れたり、管や弦を気軽に使ったりしつつ、その世界観を、中学や高校のブラバンレベルな感じで聴かせる庶民性もあります。それらは総じてポップです。
それだけじゃなくエレクトロ系実験音楽やクラッシック作品みたいなものも同時に作ってしまう鬼才です。
さて、そんな彼のクリスマスに対する思いというのは異常です。
2006年にリリースしたクリスマス作品『songs for christmas』は何と5枚組。
さらに2012年に出した『Silver&Gold』と題したクリスマス作品が、何と、これが再び5枚組なのです。
つまり、その頃、10枚のクリスマス作品を録音したということになります。
カバーからオリジナル作品まで、彼らしい歌とアレンジでこれでもかと聴かせます。
勿論、『キャリー・アンド・ローウェル』を初めとしたオリジナル作品も素晴らしいのですが、それに負けず劣らずのクリスマス作品です。
さて、ここからが彼の偉いところですが、それぞれのパッケージがボックス仕様で、その中にはCD5枚とステッカーやら解説やらがぎっしり詰まっています。
でも、Amazonでの価格はというと、それぞれ2,500~3,000円という低価格で売られているのです。
これはどちらも買いです。
お薦めです。
さらに、スフィアンの魅力満載の作品ですから、クリスマスでなくても十分に楽しめます。何となくBGMとして流すことにも対応可。
決してマニアックな作品集ではありません。
まずは、『Songs For Christmas』を愉しんでみてください。
彼は1975年生まれですから、現在45歳。僕らとは世代が違いますが、彼が何故にこれほどまでにクリスマスに思いを寄せるのか、それは彼の生い立ちや生活環境に関係があるのかもしれません。
『キャリー・アンド・ローウェル』の歌詞などを紐解けば、おのずとその答えが見つかるかもしれません。
彼は2008年1月に一度だけ来日公演を行なっています。
大阪と東京での2公演だけでしたが、僕はその東京公演を観ることが出来ました。
背中に大きな羽根をつけて登場した彼。それ以外は何の演出もなく、一曲一曲丁寧に曲を届けてくれました。非常に真摯なアーティストという好感の持てるステージでした。
ブレイク前の未だ若い時期の彼のナイーヴなパフォーマンスは貴重な体験でした。
今回紹介したクリスマス作品をきっかけに、スフィアン・スティーヴンスの魅力にどっぷりハマって頂きたいと思います。
それではメリー・クリスマス!!