早く新チームをこの目で見たい。サッカーが、サッカーのある生活が、この街にまた戻ってくる。
開幕がいよいよ今週末に近づいてきた。
例年通り、アウェイでの開幕。今年はザスパクサツ群馬が相手となり、新潟に割り当てられたアウェイ席4,000枚のチケットはものの数分で売れ切れたという。
どれだけ多くのサポーターが今季のチームに注目しているかの現われであろう。
約1ヶ月に及ぶ高知キャンプを終え、チームは地元新潟に戻って、開幕に向けて調整を続けているが、今季はどんなスタメンで、どんなサッカーをしていくのか、全くの新チームとなり、その点は現地に行った記者以外はわからない。
もっとも、アルベルト監督がやろうとしているサッカーは、先月、先々月のこのコラムで書いた通り、一般的にはそれほど知れ渡ってはいないが、現在のサッカーの主流ともいえるもので、それほど目新しいものではなさそうだ。
私の理解の中で整理すると、今期のアルビレックスのサッカーは、ボールを保持しつつ、相手ゴール付近ではリスクを冒してでもどんどんチャレンジするのが約束で、その代わり、ボールを奪われても高い位置でボールを回収するのが原則となる(攻撃のための守備)。結果として、敵陣で攻撃し続けているのが正しい形となるが、そのためにもパススピード、判断、攻守の切り替えなど、あらゆる場面で「スピード」が要求されているようである。
残念ながら、アルベルト監督自身が、このサッカーは成熟に時間がかかることを認めており、トレーニングマッチの結果をみても、なるほどと変な納得をせざるを得ない。
ただし、慰めになるかわからないが、バルセロナで、結果として1年目からリーグタイトルを取ったグアルディオラも、プレシーズン、シーズン序盤とまるで振るわず、その手腕が疑われていたのも事実だ。改革には、時間と忍耐を要することが多いことを、サポーターは肝に命じておくべきであろう。
一方で、4-3-3を基本とするバルセロナと対照的に、3バックなどシステムを臨機応変に変えていくのがアルベルト風らしい。
もちろん、フォーメーションの並びというのは、そのチームの戦術コンセプトを表す一つに過ぎない。試合中は、チームの約束にしたがって各自が判断して自由に動くのがサッカーで、俺は中盤だから、俺はディフェンスだからといってポジション名で自分のプレーエリアを決めてしまうのは、昭和の日本のサッカーである。
相手の出方に対応したり、出場する選手の持ち味を最大限に発揮するために、その基本となる並びを決めるだけであって、やろうとするサッカーに変わりはなく、数字の並びにそれ以上の意味はない。
この点、2月17日付の新潟日報朝刊に、番記者の方が書いた予想フォーメーションが掲載されていた。
それによると、渡辺新、シルビーニョを2トップとする4-4-2。スタメン予想には昨年の主力が並ぶ。一般に4-4-2は攻守のバランスがよく、守備時には前線の2トップが連動してプレスをかけることで、後ろの2ラインでボールを奪いやすく、また、攻撃時もサイドハーフが「幅」を確保する中、2トップが連動して動き、スペースを作ることが可能となる。
ボールを保持しつつ、高い位置でのチャレンジを繰り返すサッカーをするために、現時点でのベストな選手と並びの組み合わせがこれという判断だろう。
それにしてもブラジル人はもちろん、アルゼンチンからウルグアイ、スペインまで実に多国籍な選手が並ぶ。
20年前に、この光景が考えられただろうか。彼らの多くが、先ほどの開幕の予想スタメンから外れているが、当然、チームの軸になることを期待して連れてきたわけで、シーズンが進むに連れて、メンバーもフォーメーションもどんどん変わり、チームは成熟し、完成に近づいていくだろう。
早く新チームをこの目で見たい。サッカーが、サッカーのある生活が、この街にまた戻ってくる。
【浅妻 信】
新潟市出身。Jリーグ昇格時からアルビレックス新潟を追い続けるとともに、本業のかたわら、サッカー専門誌などに執筆している。さらにASジャミネイロの監督としても活躍中