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浅妻 信のサッカーフリークエッセイ

FOOTBALL JUNKIE【トレント報道に接して】

新潟順位_10位 勝点58(16勝10分14敗)※11月15日現在

  • 情報掲載日:2019.11.15
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

チームに一本の太い柱を通すためにも、また、より組織的に戦うという意味でも、ここらで欧州路線に舵を切るのも勝負としては面白いのではないか。

3年連続と記憶する終盤怒涛の追い上げもむなしく、今年も、残り3試合を残して最大の目標とするJ1昇格を逃した。アウェイでしか勝てず、ホームで負け続けたチームが、終盤はホームで強さを発揮し、逆に、アウェイで、降格争いをするチームに2試合続けて不覚を取った。さらに記録を眺めると、8月17日に岡山に零封されて以来、攻撃面で無得点はなかったものの、一方で、唯一、複数失点をした前述のアウェイ2試合でのみ敗北を喫した。J1昇格を果たすには、強固な守備が不可欠であるが、まさに身をもってそれを体験したシーズンであったといえよう。

シーズン前から財政面での厳しさを指摘され、限られた戦力と補強で戦ったシーズンである。アルビレックス新潟シンガポールを再建した是永氏が社長に就任し、「プラネタスワン」をはじめとする商品グッズの開発、ホームゲームイベントの強化のほか、広報の面でも数々の改革がなされた。過去2年、結果として現在の財政状況を生む原因となったシーズン途中の選手補強も、今期は舞行龍のみ。秋山、本間至恩、渡辺新太、戸嶋、新井と2年前までプロですらなかった選手がスタメンに並ぶ。
今期の決算がどうなるか、チームの存続にも係る累積の赤字がどれだけ減ったのかは今の時点ではわからない。来年、J参入後22年目を迎えるアルビレックス新潟であるが、紛れもなく、今の新潟が現在の等身大の姿である。今年が、再浮上への一歩となったのか、はたまた、いぜん低迷の途上にすぎなかったのか。今シーズンの検証は未来まで待たなくてはならない。

そんななか、先日、ある全国紙で、来季「グアルディオラの右腕」トレント監督招へいへ、との見出しで、新潟の来季監督人事の噂が報じられた。
欧州サッカーはそれなりに詳しい方だと思うが、トレント氏の名前は初耳。想像するに、トレント氏の代理人からJリーグに(ぼやっとした)オファーがあり、それを聞きつけた記者が、メソッドシステムなど、スペインサッカーへの接近をみせる新潟と結び付けて飛ばしで書いたものと思われる。実際、この噂は、是永社長本人に怒りをもって一蹴され、あえなく消えた。
監督人事というデリケートで、交渉上、様々な駆け引きもはらむ問題を無責任に報じられた、当事者たる是永社長の怒りはもっともであるが、昇格という目標がなくなった今、妄想で来季を語るのもまたサポーターの楽しみでもある。
大ヒットしたドラマ、「ノーサイドゲーム」においても、スポーツに無知な大泉洋演じる新米GMに対し、監督によってチームがまるで別物になることを、「社長によって、会社もまるで変わるでしょ?」と諭し、その重要性を納得させるシーンがあった。

日本代表がスペイン化を試みたのが10年前。代表の方はそれから迷走し、現在に至るが、個人的な印象だが、ここ数年、クラブチームの方が監督人事や選手獲得を含めスペインやフランスなど欧州との融合が感じられる。スペインの若手選手にとっては、イニエスタやビジャの存在によって日本は決して遠い国ではなくなっているのではないか。

せっかくのメソッドシステムをどうトップチームに結び付けるのかという点については、まだ明確な方向性は示されていないように思える。わかる人はわかると思うが、スペインサッカーは決してショートパスをつなぐ華麗なスタイルのみではない。局面での激しさや守備戦術の徹底は、日本から移籍した選手が戸惑うように、より組織的、かつ徹底しているし、幼少時から試合に勝つためのトレーニングをしているため(メソッドシステムに繋がる)、戦術も日本より多様だ。

チームに一本の太い柱を通すためにも、また、より組織的に戦うという意味でも、ここらで欧州路線に舵を切るのも勝負としては面白いのではないか。まぁ、こんな妄想もシーズンオフの楽しみの一つとして許してもらいたい。

 

【浅妻 信】

新潟市出身。Jリーグ昇格時からアルビレックス新潟を追い続けるとともに、本業のかたわら、サッカー専門誌などに執筆している。さらにASジャミネイロの監督としても活躍中

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