『ダウンダウン物語』という映画を御存知でしょうか。
1976年にイギリスで公開され、日本でも翌年の1977年に公開されています。
この映画、1920年代の禁酒法時代のニューヨーク、ダウンタウンはリトル・イタリア辺りに根を下ろした、ギャング団の抗争を描いた映画なのです。
こうお書きすると、まるで「ゴッドファーザー」的な血なまぐさい、大人の映画かと思われるでしょうが、これがまったく違います。
何とこの映画に登場する全ての役者が子供なのです。
ここには、当時14歳だった女優・ジョディ・フォスターも出ているのですが、彼女だけではなく、その子供達の演技が見事なのです。
ファッションも立ち振る舞いも大人顔負けのマジなミュージカル風映画です。
とは言っても、やはり子供は子供。そのギャップの可愛らしいの何のって。たまりませんよ。
この映画の監督は、あの、アラン・パーカーです。
彼のデビュー作と言っていいでしょうね。
のちに彼は、シリアスな『ミッドナイト・エクスプレス』『愛と哀しみの旅路』を撮り、そして、ダブリンを舞台にソウル・バンドの成長を描いた『ザ・コミットメンツ』や、ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』を手掛けるなど、音楽大好き監督としての側面も見せてゆきます。
実はアラン・パーカーは、友人のデヴィッド・パットナムが1971年に映画『小さな恋のメロディ』を製作する際に原作・脚本を手伝っているのです。
この『小さな恋のメロディ』の主題歌は、ビージーズの『メロディ・フェア』で、日本では特に大ヒットをしています。
主演のマーク・レスターとトレイシー・ハイドの可愛らしさが忘れられませんね。
アラン・パーカーはその頃から音楽とは縁深い人だったのですが、そんな彼の監督デビュー作である『ダウンダウン物語』はどうだったかと言うと、これがとにかく素晴らしいのです。
監督がこの映画の音楽制作を頼んだのがポール・ウィリアムスです。
ソロとしても多くの良作を発表していますが、彼の名を有名にしたのは他者への提供曲です。
カーペンターズに提供した『愛のプレリュード』『雨の日と月曜日は』
そして、スリー・ドッグ・ナイトに提供した『オールド・ファッションド・ラヴ・ソング』『ファミリー・オブ・マン』など、コンポーザーとしても多くのヒット曲を持っています。
僕は、そんなポール・ウィリアムスの最高傑作が『ダウンダウン物語』オリジナル・サウンドトラックだと思うのです。
アルバムの冒頭を飾る『主人公バグジー・マローン』を唄っているのがポール・ウィリアムスです。
まさにこの時代──1920年代にマッチするノスタルジー感溢れるジャジー&ポップな曲。
ホンキートンク調のピアノもごきげんです。
この『主人公バグジー・マローン』は公開当時、シングル盤でもリリースされていますが、そのテイクはポール・ウィリアムスではなく、女優・サンドラ・ディッキンソンが唄っています。
レアなアイテムですが、興味のある人はオークションで探してみて下さい。
フレッド・アステアのようなダンサーになることを夢を見る黒人フィジーが唄う、『肥っちょサムの秘密酒場』、歌手のブラウジーが表舞台に立ちたいと願い唄う『アイム・フィーリング・ファイン』は、厚いコーラスと共に唄われるオールド・タイムなジャズ。
同じくブラウジーが切なく唄う美しいバラード『オーディナリー・フール』など、
どの曲を聴いても、メロディアスで、凝りに凝ったお洒落かつポップな曲が満載なのです。
ジャズ好きにもポップス好きにもご満足頂けるサウンドトラックだと思います。
今でも映画のDVDもサウンドトラックは容易に入手可能だと思います。
まずは映画から見て頂いた方がいいかなぁと思いますが、
音楽アルバムとしても充分楽しめますよ。