「月刊にいがた」さんで現在、コラム連載をさせて頂いております、田中です。毎月、新潟ロケ作品を1本ずつ、ロケのエピソードとともに紹介させて頂きたいと思っております。
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●そもそも田中さんって??
「新潟ロケ」と言ったらこの人、田中克典(たなかかつのり)さん。
元新潟県フィルムコミッション協議会コーディネーター。
現在は、東京フィルムコミッション 東京ロケーションボックスに勤めており、東京でのロケ誘致や撮影支援に携わる業務を行なっている。
田中さんは業界にも太いパイプを持ち、新潟県FC時代は、新潟県内のロケ誘致で大活躍。趣味はもちろん映画鑑賞。あとはレトロ建築物探索。新潟県出身かと思いきやまさかの関西人です。
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今回紹介する『ヴァイブレータ』が公開された2003年度。
実はこの年、この作品で各映画賞を総ナメにした女優さんがいました。それは映画初主演ながらも大胆な演技を披露した寺島しのぶさんです。『第16回 東京国際映画祭』をはじめ、『第46回 ブルーリボン賞』『第25回 ヨコハマ映画祭』などで主演女優賞を受賞。分かるだけでもなんと15冠以上! これはすごすぎます!!
『ヴァイブレータ』は公開してすぐスマッシュヒットを記録。その後、大ヒットしロングラン上映となりました。当時、とにかく話題を独占したこの作品、実は全編を通して新潟県が撮影地となったのです。皆さんが観たことのある風景がたくさん登場することでしょう。
では紹介していきたいと思います。
アルコール依存症の女性ルポライターと長距離トラック運転手が織りなす、行きずりの愛の物語で、監督は『ストロボエッジ』や『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を手掛けた廣木隆一氏が務めました。
愛に飢え精神的に不安定な女性と、コンビニで偶然知り合った男との、東京から新潟へ向かうまでの逃避行を描きました。寺島しのぶさんの相手役は、新潟ロケ作品にたびたび出演する大森南朋さん。実はまだブレイク前でした。金髪姿の大森さんによる力の抜けた自然体な演技が素晴らしかったです。
【あらすじ】
自分の頭の中に氾濫する声に悩まされ、不眠や過食、食べ吐きを繰り返すアルコール依存症の女性ルポライター・早川玲。ある雪の夜、コンビニでひとりの若い男に目を留めた彼女は、「彼を食べたい」と言う直感に従い行きずりの関係を結ぶ。男は岡部希寿と言うフリーの長距離トラック運転手。翌朝、そのまま岡部のトラックに揺られ次の仕事先である新潟へと同行した玲は、彼と言葉や肌を重ねながら徐々に心癒されていくのであった…。
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撮影の話が制作会社からきた当時、新潟県内に撮影支援をする団体は新潟ロケーションネット(ロケネット)しか存在していませんでした。
そんな新潟で唯一無二であったロケネットは、なんと話が舞い込んできてから撮影が始まるまでの一ヶ月間、タイトなスケジュールにもかかわらずロケ地の調整やエキストラの手配などすべてをこなして本番を迎えたのです。この支援力は当時、全国の映画業界へ鳴り響いたに違いないことでしょう。
とにかくいろんなシーンが新潟で撮影されました。
旧塩沢町(現・南魚沼市)での空撮から始まり、南魚沼市を流れる魚野川に架かる八海橋ではトラックと小学生が擦れ違うシーン(下写真)、南魚沼市で毎年冬に行なわれる『雪譜まつり』で雪のなかに浮かぶ幻想的なロウソクを主人公が見つめるシーン、三条市の国道8号線沿いにある五十嵐食堂(現在は閉店)では主人公のふたりが最後の食事をするシーンが撮影されました。
三条市の五十嵐食堂(上写真)でカツ丼を注文する男二人連れの客。実はロケネットスタッフ。なぜか長時間演じていたのが印象的です。このシーンは注目です(笑)
その他にも、国道8号線沿いのガソリンスタンド、巻潟東インター近くにあるファッションホテル、新潟東港の工場群周辺が登場します。
そして撮影が終了した2月14日。
新潟駅南の居酒屋で行なわれた打ち上げでは、紅一点の寺島しのぶさんが「今日はバレンタインですから!」ということでスタッフ全員分の支払いをしたそうです。寺島さん太っ腹っっ!!!!
『ヴァイブレータ』を観たい方はDVDで!
●新潟ロケ地
新潟市、三条市、南魚沼市 ほか
●作品
『ヴァイブレータ』(2003年公開)
監督●廣木隆一
出演●寺島しのぶ/大森南朋/田口トモロヲ/牧瀬里穂 ほか
発売元●ハピネットファントム・スタジオ
販売元●ハピネット・メディアマーケティング
価格●DVD 2,494円 発売中