「月刊にいがた」さんで現在、コラム連載をさせて頂いております、田中です。毎月、新潟ロケ作品を1本ずつ、ロケのエピソードとともに紹介させて頂きたいと思っております。
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●そもそも田中さんって??
「新潟ロケ」と言ったらこの人、田中克典(たなかかつのり)さん。
元新潟県フィルムコミッション協議会コーディネーター。
現在は、東京フィルムコミッション 東京ロケーションボックスに勤めており、
東京でのロケ誘致や撮影支援に携わる業務を行なっている。
田中さんは業界にも太いパイプを持ち、新潟県FC時代は、新潟県内のロケ誘致で大活躍。趣味はもちろん映画鑑賞。あとはレトロ建築物探索。新潟県出身かと思いきやまさかの関西人です。
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日本中を驚愕させた未解決窃盗事件「三億円事件」。
容疑者のモンタージュ写真を見たことがない人はいないくらい有名な出来事です。が、一応事件を簡単に説明しますと、昭和43年12月10日に、東京都の府中刑務所周辺で発生した窃盗事件で、ひとりの男がわずか3分の間に現金輸送車に積んであった三億円を奪い逃走。その後犯人は見つからず、事件は時効を迎えました。「三億円事件」で検索すると、いろんな犯人説が出てきます…が、それはここまでとして…。53年経った今も未解決となっている「昭和最大のミステリー」なんですね。
実はこの事件、伝説過ぎて過去何度もテレビドラマ化や映画化されています。今回紹介する『ロストクライム -閃光-』もそのひとつ。
三億円事件をモチーフに、ある殺人事件の捜査に乗り出した老刑事と若手刑事のコンビが、恐るべき真相にたどり着くという物語です。
【あらすじ】
出世を夢見る若手刑事の片桐は、ある殺人事件の捜査で定年間際の老刑事・滝口とコンビを組むことに。滝口の身勝手な振る舞いに困惑する片桐だったが、被害者が三億円事件の犯人グループのひとりと聞かされ驚がくする。やがて恐るべき真相にたどり着き…。
まず事の始まりは、映画やテレビドラマ制作を行なう角川大映から、三億円事件の映画を撮りたいと突然のオファー。なんと撮影は「犯行シーン」とのこと。実際の犯行現場である府中刑務所周辺は、その後の開発で当時の面影がなくなってしまったこともあり、新潟刑務所周辺が当時の雰囲気に限りなく近いということからロケが敢行されたのです。
実際の犯行現場にはガードレールがあったらしいのですが、新潟刑務所脇の市道にはない! ということで、現場と同じ型のガードレールを約300メートルに渡り設置したんです。さらには、犯行に使われた黒いセダンと白バイも当時と同じタイプのものを使用しました。
近隣の事業所の方たちの協力も得て見事に犯行シーンが再現されました。写真を見て頂くと分かりますが、とっても雰囲気が出ていますよね〜。また、犯人のアジトや現金を積み替えたりした場所は刑務所近隣の民間の土地にセットが組まれました。
本当は実際の犯行日である12月10日に犯行シーンを撮影しようと予定をたてていた制作側。しかし残念ながら10日は快晴。大雨だった事件当日の再現は不可能となってしまったのです。「犯行の一部始終を完璧に再現するため、一切妥協はできない」という制作スタッフの熱い思いが伝わってきました。
そして、間瀬海岸では巨大観音像がある旧白岩荘を喫茶店に見立てての撮影が行なわれました。監督は日本海の荒波を期待していたのですが、まさかの晴天。とても残念がっていました。
この作品制作の立役者は、なんと言っても会場設営などを行なうレントオール新潟さん。ガードレールの再現や大規模雨降らし、セットの地ならしなど、彼らの協力なくては成立しなかった作品だと思っています。
『ロストクライム -閃光-』を観たい方はDVDで!
●新潟ロケ地
新潟刑務所脇の市道(新潟市江南区)/ 間瀬海岸 旧白岩荘(新潟市西蒲区) ほか
●作品
『ロストクライム -閃光-』(2010年公開)
監督:伊藤俊也
出演:渡辺大/奥田瑛二/武田真治/かたせ梨乃/原田芳雄 ほか
発売・販売元:KADOKAWA
価格:DVD特別版5,170円