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浅妻 信のサッカーフリークエッセイ

FOOTBALL JUNKIE【コロナウイルスとJリーグ】

  • 情報掲載日:2020.03.26
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

クラブはまさに大きく変わろうとしている。
こんなところで躓いてはいられない。
こんな時こそ、クラブを支えていこうではないか。

宗教しかり、人類にとっての永遠のテーマが死に対する恐怖の克服であるように、未知の世界(物質)への恐怖というのは、人間が本質的に持っているものなのだろう。

ここに、ソロモン王の格言、「賢者は聞き、愚者は語る」がある。
賢者こそ他人の話に耳を傾けるのに対し、愚か者は、聞きかじりの知識を得意がってひけらかす。
SNS全盛の今、情報という名のヒステリックな叫びと刺激的な映像が、日々メディアやSNSを通じて流され、まるで自分で自分の首を絞めているかのように都市生活を死に追いやってきたが、ここにきて、それが大袈裟なことではなく、我々が想像をしている以上の脅威であることが判明しつつある。
わずか1節を消化したのみで中断されていたJリーグも、先日、再開の日程が発表されたが、今後の展開次第ではまだまだ予断は許さない状況が続いている。

国内では2月末の開幕から、欧州各国のリーグも3月の中旬までにすべて中断されたが、スポーツがない日常がこんなに寂しいものだとは思わなかった。
週末にゲームをみて、一喜一憂し、また、次の週末を待ちながら1週間を過ごす。週末が近づくにつれて、ゲームに関する情報はどんどん集まってくる。
このような当たり前の日常がなくなるだけで、日々の彩りはこんなに損なわれるものなのか。

しかし、我々以上に辛い思いをしているのが選手とクラブであるのは言うまでもない。
スポーツ面においては、開幕にあわせて調整してきた中、1試合のみで中断となり、再開の日程も決まらないままトレーニングのみを続けるというのは、目的設定やモチベーションの維持で相当苦労をしていたと思われる。
特に、新潟に限って言えば、大学チームが活動の自粛を余儀されている中、地理的条件からトレーニングマッチの設定にも限界があるのではないか。
まるで鎖国下のチームのようだ。

また、クラブの財政面での打撃は相当なものであろう。
大勢の来場客が予想された開幕戦が延期になったことをはじめ、再開後も、かりに全日程を消化するにしても、相当数の試合が平日に振り替えされることになる。
場合によっては、無観客での再開もありうる。
クラブのキャッシュフローがどうなっているのかは勉強不足でわからないが、1、2ヶ月現金での収入が減ると、経営的に回せなくなってくるチームも出てくるのではないか。
事実、欧州においてはそういうクラブも出てきているという。

誰もが納得するような結論を出すことが不可能ななか、これらについて、Jリーグの実行委員会は最適解を模索しているはずだ。
先に、今季のJ1・J2リーグ戦は降格制度を採用しないことが発表され、当然ながら、大きな反響を呼んだ。
ただ、先のソロモン王の格言ではないが、サポーターも一時の感情ではなく、冷静に状況を分析することによって、この問題に取り組んでいく覚悟が必要であろう。
嘆いていても始まらない。
例年通りのリーグは開催できないという現実を受け止め、この問題に各自が主体的に取り組むしかないのだ。

最後に、明るい?ニュースを。
今季のアルビレックスはSNSを通じて、積極的に情報を発信している。
選手だけでなく、アルベルト監督すらまめに更新し、サポーターに寄り添っている。
アルビレックスのサポーターの構成は、高年齢者が多く、若年層が薄いことが明らかになっているが、これらの取り組みは、若年層、ひいては新しいファン層の獲得に大いにアピールしてくることになるだろう。

SNSの積極的活用、選手の国籍の多様性など、今期のアルビレックス新潟は、Jリーグの中でもかなり攻めてきている。
クラブはまさに大きく変わろうとしている。
こんなところで躓いてはいられない。
こんな時こそ、クラブを支えていこうではないか。

 

【浅妻 信】

新潟市出身。Jリーグ昇格時からアルビレックス新潟を追い続けるとともに、本業のかたわら、サッカー専門誌などに執筆している。さらにASジャミネイロの監督としても活躍中

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