パーソナルジムパーソナルジム パーソナルジム
  1. Home
  2. スペシャル
  3. FOOTBALL JUNKIE【7つの提言を読む】

浅妻 信のサッカーフリークエッセイ

FOOTBALL JUNKIE【7つの提言を読む】

アルビレックス新潟是永新社長の就任会見における「7つの提言」を読み解いてみる

  • 情報掲載日:2018.12.24
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

来季の編成を含め、全容が明らかになっているわけではないが、久しぶりにワクワクするオフである。

12月20日付けのクラブリリースで、予想通り、是永大輔専務理事の代表取締役就任が発表された。これまで、歴代の社長は、クラブ創設時のチャーターメンバーのみであったため、初めて外部の血(県外出身という意味を含め)が入ることになる。
ちなみに、この発表の少し前に、レディース部門を独立事業とし、新会社を立ち上げることが発表されたが、そこの新社長山本英明氏も同様である。まさに、「新しい風が、吹いた」である。

決して今までの体制を批判するわけではないが、プロスポーツという夢を売る商売としては、良い意味では堅実すぎ、悪い意味では旧態依然としすぎていたと思う。
情報伝達手段の多様化や、それに伴うカスタマー需要の変化に対応しきれず、スポーツ部門以外では、後手後手に回っていた感は否定できない。
今回、是永氏の代表取締役の就任に合わせ、加藤順彦氏、森田正康氏という、二人の取締役の就任が発表されたが、二人ともグローバルに活躍する新世代の実業家であり、是永氏とのトリオで、どのようなアイデア、展開が生まれるのか、一躍、Jリーグの最先端に躍り出たような気がする。

 

是永新社長の、社長就任会見における「7つの提言」については、こちらで詳細に紹介されているが、これらのうち、3と4、さらに上で紹介した6をのぞいては、全て「クラブの価値を高める」という具体的な方法そのものであるので、今回は3と4を読み解いていきたい。

 

「3.編成について」

なぜ、今期になっていきなり数億円の削減という疑問を誰もが思ったであろうが、大方の予想通り、クラブライセンス制度の債務超過が迫っていることであり、田村社長時代までは単年で黒字を出していたことから、この2年の残留争い等で、かなりの賭け(選手獲得などの出費)に出ざるを得なかったというのが大きな要因であろう。
来期については、4とも密接に関連してくるが、クラブのビジョン、カラーが明確になってきているので、それに賛同してくれる選手は、多少、条件が厳しくても意気に感じて残ってくれるという期待を持ちつつも、年俸の高額な選手は本人が望まなくともクラブを去ることになるかもしれない。
いずれにせよ、私自身は、来季はリスタートの年だと考えている。

 

「4.メソッド部門の新設」

今回の提言の目玉にして、1番わかりにくいのが、これかもしれない。
平たくいうと、どのクラブでも「育成重視」ということが金科玉条のごとく叫ばれ、アルビレックスも例外ではなかったが、これに本気で取り組むどころか、チームカラー、スタイルをアカデミーから落とし込み、クラブのアイデンティティを確固たるものにするということである。
部門を新設してまで、明確に宣言しているクラブは日本ではまだない。言うまでもなく、こちらも「クラブの価値を高める」ことに直結する。
このメソッド部門新設に通じる育成の概念は、スペインが主流であろう。
世界的に有名なバルセロナだけでなく、バスク人のみで構成するアスレチック・ビルバオ、そして、同じバルセロナのエスパニョールですら(?)、アカデミーからトップに繋がる、一貫としたプレーモデルの確立、クラブ理念がある。ヨーロッパのサッカーに詳しい人ならわかると思うが、スペインのクラブは、2大クラブ以外も、ネームバリューで負けていてもとにかく強い。具体的な説明は割愛するものの、例えば、状況判断に基づいて正しいプレーをするというのは、口で言うのは易しいが、実際、一朝一夕で身につくものではないのだ。条件反射的に、状況を認知し、正しいプレーを選択できるようになるには、小さい頃からの反復しかない。
そういうわけで、スペインでは、一番優秀な指導者こそ、育成部門にあてられると聞くが、そんななか、来季のアルビレックスのアカデミーの責任者に指名されたのが、今季、アルビレックスシンガポールの監督としてタイトルを総なめにした吉永一明氏と聞くと、思わず唸らざるを得ないだろう。

まだ、来季の編成を含め、全容が明らかになっているわけではないが、成績は悲惨であったものの、久しぶりにワクワクするオフである。
個人的な話で恐縮だが、新取締役の加藤氏とは、プロフィールを見ると、同じ時期に母校のキャンパスで過ごしていたようで、勝手に親近感を覚えてしまっているし、是永氏とも何度かお目にかかったこともあるので、自分のアイデアも今度提言したいな、と思ったり。
そうだ。それこそが、皆さんと一緒に作る市民クラブたる所以、アルビレックス新潟のアイデンティティそのものではないか。

 

【浅妻 信】
新潟市出身。Jリーグ昇格時からアルビレックス新潟を追い続けるとともに、本業のかたわら、サッカー専門誌などに執筆している。さらにASジャミネイロの監督としても活躍中

関連記事