アルビレックスのDNAは残したまま、新しいリーダーの下、名実とともにリスタートをきるのが来シーズンだろう。
ラスト3試合は、1分2敗。
連勝で終えた昨シーズンと対照的に、最後はちょっと不完全燃焼な形でシーズンの幕を閉じた。
来季に向けて期待を膨らませようにも、何をどうしたらよいのか、もって行き場のないモヤモヤ感を抱えてしまったサポーターも少なくないだろう。
シーズン終了後の総括で、片渕監督は、敗戦が多すぎたことを悔やむ。
当たり前のことじゃないかと思う人もいるだろうが、この裏には、15勝をあげている事実がある。
この15勝という数字だけならリーグでも中上位であり、にも関わらず16位という順位に沈んだのは、引き分けの勝ち点すら奪えず、無様に敗戦を重ねたシーズン中盤までの戦いがある。
優勝した松本山雅が、1試合の平均失点が1点に満たないことでわかるとおり、リーグで上位に入ってくるチームはまず失点をしない。
また、良い守備があって(ボールを奪って)、初めて良い攻撃が生まれるのに、この守備を、悪く言えば、個人の判断任せにしたため、チームが機能不全に陥ってしまっていた。
片渕監督就任後、球際、攻守の切り替え、運動量、セカンドボール獲得を徹底させ、失点しないチームへと修正を行い、連勝へと導いた。
是永専務取締役の話とあわせても、いわゆる「アルビレックスらしさ」を、来シーズンはより追求していくことは間違いない。
この点、フロントと現場とのブレもないだろう。
片渕監督自身が、「来季はゼロからのスタートではない」と力強く語ってくれている。
いずれにせよ、来シーズン、この生え抜きの監督で再びJ1の舞台に挑むことになる。
一方、不安要素もある。
例えば、チーム自体がそれを認め、積極的なアナウンスで状況を説明し、サポーターに理解と協力を求めているのが、来季のチーム予算の大幅な削減である。
およそ5億減とも説明されているが、その中には、1年限定の救済措置であったJ1リーグの均等分配金も含まれている。
J1が3.5億円に対し、J2は1.5億円で、降格1年目に限り80%保障されていたものの、それがなくなるため、計算するとこれだけでも1.3億円のダウンとなる。
選手の総年俸がいくらなのか知るよしもないが、相当数の選手の年俸が賄える金額なのではないかと思われる。その分のお金をどこからか調達するのか、そうでなくては現在の選手をそのまま維持するのは不可能だ。
誰かのせいにするわけではないが、今になって突然、緊縮財政の指令が出たわけではないと思う。
昨年、そして今年と、残留やJ1復帰を目指すために、かなりの選手の獲得に動いていた。
加えて、成績不振で、スタジアムの入場者数もグッと落ちた。
当然、クラブライセンス制度の財務基準がちらつく。
是永氏も、「これからもクラブが存続するために」行う施策であることを強調していることから、守備面の修正を図った今季終盤の戦い方同様に、まず、財政面からしっかりと基盤を作っていこうとしている見方もできる。
一時はJ3まで落ちた大分が、来季から久しぶりにJ1に昇格するが、大分のサポーターに、その復活の要因を尋ねると、J3に落ちてから、良くも悪くもチームからみんな去っていき、文字通り1からチームが生まれ変わったからだと断言していた。
Jリーグがまだ佳境であることから、選手の移動を中心とした、来季の編成の話もまったく聞こえてこない。
もっとも、それがどんなであっても、アルビレックスのDNAは残したまま、新しいリーダーの下、名実とともにリスタートをきるのが来シーズンだろう。
いずれにせよ、「アルビレックスらしさ」がピッチ内外でアイデンティティとして確立されていくのは間違いない。
【浅妻 信】
新潟市出身。Jリーグ昇格時からアルビレックス新潟を追い続けるとともに、本業のかたわら、サッカー専門誌などに執筆している。さらにASジャミネイロの監督としても活躍中