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棚橋和博音楽コラム 僕にとってのロック名盤八十八作品

【第6回】『リリース・ザ・スターズ』ルーファス・ウェインライト

クラシックやオペラテイストをポップスフィールドへと持ち込み、見事に昇華した エンターテイナー、ルーファス・ウェインライト。

  • 情報掲載日:2018.07.14
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。
『リリース・ザ・スターズ』
『リリース・ザ・スターズ』

「僕にとってのロック名盤八十八作品」なるコラムの第6回目です。

今回の主役はルーファス・ウェインライト。彼がデビュー作、
『ルーファス・ウェインライト』をリリースしたのは、1998年5月です。

「超大型新人!!」と言われ、割と話題になっていたので聴いてみると、
そう言われるのも当然という内容で一気にファンになりました。

デビュー作の冒頭を飾るピアノの弾き語りで始まる『フーリッシュ・ラヴ』は、
徐々に楽器が増えてボードヴィル風となり、
そこにストリングスが加わり、オペラか、クラシックか? と思わせる、
言わばかなり凝った作りで僕を引き込みました。

聴きながら、どこかで聴いたことのある声だなぁと思っていたのですが、
その当時、その答えには辿り着きませんでした。

『ルーファス・ウェインライト』
『ルーファス・ウェインライト』

 

あまりにデビュー作が素晴らしかったので、ルーファスは一体どういう経歴の持ち主かと、レコード会社から頂いた彼の資料をチェックしました。

驚いたことに、父はラウドン・ウェインライトⅢ。母はケイト・マッガリグルでした。

どちらもメジャーとは言い難いですが、優れた作品を発表しているミュージシャンです。
勿論、両者とも僕は聴いていました。

特にお母さんの『ケイト&アンナ・マッガリグル・ファースト』は、今でも頻繁にターンブルに乗っかる素晴らしい作品です。

『ケイト&アンナ・マッガリグル・ファースト』
『ケイト&アンナ・マッガリグル・ファースト』

1975年にリリースされたこのアルバムには、ベースにトニー・レヴィン、ドラムにスティーヴ・ガッド、
ギターにデヴィッド・スピノザ、ヒュー・マクラッケン、リトル・フィートのローウェル・ジョージ、サックスにボビー・キースら豪華メンツが参加しています。

80年代後半だったら、更に、とんでもないギャラだったはずです(笑)。
既にケイト・マッガリグルがそれだけ注目されていた証ですね。


そんな両親から生まれたルーファスですから、言わば、才能があって当然だなぁと思いました。

ところが彼が幼い頃、その両親が離婚し、母のケイトにルーファスは育てられたようです。

少年時代のほとんどをカナダのモントリオールで過ごした彼は、随分早くから楽器や歌に親しみ、
13歳で“マッガリグル姉妹と一家”という、ファミリーグループで巡業を始めます。

メンバーは妹のマーサ、母のケイト、伯母のアンナ──そう、
ケイト&アンナは姉妹だったのです。
そんな風に子供の頃から音楽にどっぷりだったわけです。

デビュー作『ルーファス・ウェインライト』をリリースした頃は25歳。世間的には若くても、
もう、相当なキャリアを積んだ実力者だったのです。そうそう、姉のマーサ・ウェインライトもメジャーデビューを果たし、素晴らしい作品をリリースしていますよ。


それと、デビュー当時、既にカミングアウトしていたのが、
彼がゲイだということ。

優れた芸術家にはゲイも多く、僕自身、驚くことはなかったですが、それ故に、どこか他のシンガーソングライターとは違う、美的感覚を感じさせるその作風には、やはり、ゲイだからこその研ぎ澄まされた感性があってこそだと思わされました。


2008年の来日公演を東京国際フォーラムCで見た時は衝撃でした。素晴らしいライヴパフォーマンスではあったのですが、アンコールに白いバスローブ姿で現れた時の寸劇パフォーマンス。
実際にはないのですが、鏡の前でイヤリングをつけ、ルージュを引くというもの。
そして靴を脱ぎ、ハイヒールに履き替えバスロープを脱ぎ捨てると、
何と、黒いストッキングとジャケットだけを羽織ったルーファスの姿がありました。
脚線美もお見事でした(笑)。

ジュディ・ガーランドのカーネギーホール公演を、会場も曲も、まんま真似たショーをやったルーファスが、
彼女のコスチューム姿と、そのショーの雰囲気をその時の来日公演でミニショー的に見せてくれたわけです。

のちに、その頃のツアーを収めたライヴDVDを見て、更にびっくり。ショーを終えて楽屋に戻ると、恋人であろう男性と濃厚なキスを交わすルーファスが居たのです。
ゲイだとはわかっていても、ストレートである僕にとっては衝撃的なシーンでした(笑)。


さて、ようやく本題(笑)。

その、来日公演の前年にリリースされた、彼にとっての5作目『リリース・ザ・スターズ』が、何と言っても素晴らしいのです。

オープニングを飾る『ドゥ・アイ・ディサポイント・ユー』は14人編成のストリングス、さらにゴージャスなホーンを従えて朗々と歌い上げるルーファス。
まさに、好きなクラシック、オペラの世界をポップシーンに於いて、
ゴージャスにミクスチャーした彼の代表曲です。

2曲目の『ゴーイング・トゥ・ア・タウン』はピアノの弾き語りとコーラスによる、ちょっと暗いメロウな曲。

4曲目の『ノーバディーズ・オフ・ザ・フック』もピアノとストリングスによる繊細で美しい曲です。


この、『リリース・ザ・スターズ』が好きなのは、やはりメロディが立っていることだと思います。
そして、ルーファスの曲毎に表情を変える艶っぽい歌が、何よりも、本当に素晴らしいです。


と、この作品を聴いていてデビュー作を聴いてふと思っていた、どこかで聴いたことのある声についてですが、
その時にその答えに辿り着きました。

その人とはクイーンのフレディ・マーキュリーです。

そう感じるのは僕だけですかね。
そんな記事、どこでも読んだことはないんですけどね(笑)。


クラシカルでオペラ──そう言えば、クイーンの美学というのも、まさにそれでした。
クイーンの『ネヴァーモア』とか『ラヴ・オブ・マイ・ライフ』とか、繊細なフレディの歌が堪能できる、

これらの曲をルーファスが唄ってくれたら素晴らしいだろうなぁ。
そんなことはあり得ないだろうけど…。

フレディが亡くなり寂しい思いをしているファンの方、
ものは試しで、ルーファスの『リリース・ザ・スターズ』は勿論、
彼の諸作をお聴きすることを強くお薦め致します。

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