近年、EV(電気自動車)は徐々に認知が広まってきて、街中でも見ることが多くなってきました。一方、FCV(燃料電池自動車)について詳しく知っている人は、まだ少ないかもしれません。
“究極のエコカー”と呼ばれるFCVは、どんな仕組みでどんな特徴をもっているのでしょうか。現在、国産車で唯一の車両であるトヨタ『MIRAI(ミライ)』を題材に紹介していきます。
そもそも「FCV」ってどんな仕組みで走るの?
FCVは車体のタンクに貯めた水素と空気中から取り込んだ酸素を化学反応させ、発生した電気を利用して、モーターを動かして走行するクルマです。
現時点ではガソリン車のエネルギー効率(15~20%)と比較すると、約2倍(30%以上)の高いエネルギー効率を実現しています。
FCVの特徴は?
➀排気ガスがなく水だけを排出
走行時に発生するのは化学反応によって発生した水と電気のみで、発生した水は車外へ排出されます。ガソリンを使用して走るクルマとは違い、NOx(窒素酸化物)やCO2(二酸化炭素)などの大気汚染物質の排出は全くありません。
また、『MIRAI』にはPM2.5など大気中の汚染物質を含む空気をきれいにして排出する空気清浄システムを搭載。つまり走れば走るほど空気をきれいにするため、ゼロエミッションどころかマイナスエミッションとも評されています。
②リニアな加速とショックのない滑らかな走り
ガソリン車のようにエンジンを搭載しないため、エンジンの回転音は全くありません。もちろん排気ガスも発生しないため排気音もありません。
100%モーターで動くクルマなので、リニアな加速感と変速ショックのない滑らか走りが特徴です。もちろん通常の乗用車と同じ感覚で運転できます。
なお、『MIRAI』に関していえば水素タンクなど重量物を車両中央寄りに配置することで低重心かつバランスのとれた前後重量配分となっているため、走行安定性が優れています。
③災害時に非常給電スポットとして活躍
FCVは発電能力があるので、外部給電器をFCVとつなぐことで災害時などに活用できます。
『MIRAI』の場合、水素が満充填時であれば平均的な一般家庭の電力約4日分を供給することができます。
EV(電気自動車)との違いは?
電気を使ってモーターを動かし、車を走らせている点はFCVとEVは同じですが、FCVは水素を使って自ら発電するので充電不要。さらにハイブリッド車やEVよりも比較的バッテリーの劣化が少ない点も特徴です。
また、現状では、EVよりも航続距離が長くロングドライブも得意で、充填時間が短い点もFCVのメリットです。
燃料となる水素はどのように作られるの?
水素は再生エネルギーで作った電気を利用して水の電気分解により製造されたり、工業製品の製造工程で副産物として産まれるなど、さまざまな方法で作ることができます。
どこで水素を充填するの?
FCVに燃料となる水素を入れることを「充填」といいます。
新潟県内ではイワタニ水素ステーション新潟中央(新潟市中央区東出来島11-12)で充填でき、一充填は約3分ほどで終了します。なお、セルフ式ではなく現地スタッフさんが作業してくれます。
【さらに深堀り!】FCVのココってどうなの?
FCVの仕組みや環境性、走りなどについて学んだあとは、さらに深堀りした情報をお伝えします。
Q)水素が爆発することはないの?
A)酸素との化学反応により電気を発生させて走っており、水素を燃やしているわけではありません。ちなみに、これまで車体の水素タンクが爆発したという事故は一度もありません。
以前、海外でFCVが停車していた場所で山火事が起きたときですら、爆発することはなかったそうです。タンクはとても頑丈な構造になっています。
Q)ランニングコストってどうなの?
A)メンテナンス面においては通常の車両と同じ点検サイクルですが、エンジンを搭載していないので、エンジンオイルやラジエーター液の交換等は不要となります。一方、FCVならではの作業としては水素タンクの検査があり、初回は4年1ヵ月以内で実施。それ以降は2年3ヵ月以内での検査を受ける必要があります。定期的な検査があるので安心です。
また、県内のイワタニ水素ステーションでは1kg1,210円(税込)となっています。例えば『MIRAI』の場合、水素タンクは約5.6kgの水素が搭載可能ですが、使用可能水素量は4.9kgなので、1回の満充填には1,210×4.9=5,929円程度の費用がかかります。航続距離から計算すると、ガソリン車換算でおおよそリッター18kmだそうです。
Q)FCVの選択肢ってどれくらいあるの?
A)現在、国内で購入できる新車は2車種。国産メーカーではトヨタ『MIRAI』のみ。また、韓国の自動車メーカー・ヒョンデ(現代自動車)の『ネッソ』がありますが、日本ではネット販売となっています。
高級感を持ったデザインが特徴の『MIRAI』は、5人乗りで850km(Gグレード)の走行距離を誇ります。低重心によるスポーティかつ上質な走り心地に定評があります。
Q)FCVは新潟でどんな活躍しているの? 購入はできるの?
A)県内ではタクシーやフォークリフトなどが導入されており、公共的な活用やビジネスシーンでの活躍が増えています。個人ユースの場合、非常時の電力供給元として購入するオーナーや、環境面を配慮して関心を持ったオーナーが多いそうです。
今後、FCVが増えていくことにより災害時の電力供給元が増加し、災害時の互助機能として活躍してくことも期待されます。
なお、FCVを新車購入する際は、エコカー減税やグリーン化特例、CEV補助金が適用されるので、詳しくはカーディーラーへお問い合わせください。
■本事業に関するお問い合わせ
新潟県 産業労働部 創業・イノベーション推進課 新エネルギー資源開発室
- 電話番号
- tel.025-280-5257