お昼に行くと、店内の混み具合よりもまず気になってチェックするのが入口のガラス戸に貼られた昼定食の紙。

ハンバーグ、ハムカツ、クリームコロッケ――頭の中に思い浮かべながら席に着けば、もう気持ちはこの店のお昼の顔であり、サラリーマンのお財布の心強い味方である『昼定食』（680円税込）に決まりです。

「店を始めて多分、50年くらいかな」と話すのは店主の山倉憲治さん。

中学卒業後、東京・神楽坂の洋食店で働き、
25歳の時に新潟市に戻ってこのお店をオープンさせました。

今から30年ほど前。店の周りに製造業の会社がたくさんあった頃は朝10時半から夜の11時までお店を開け、ずっと料理を作りっぱなしだったと言います。

「ニュースの話とかプロ野球の話とか、カウンター越しにお客さんといろんな話をするのが楽しかったし“うまかったよ”とひと言をもらえるのが、今日までやって来られた理由だね」。

最近はカウンターに座るお客さんも、皆スマホ画面に夢中になっているのが少し寂しいのだそう。

確かに自分を思い出しても、そういうこと、ありますよね。

お昼休みだからスマホを見る時間も大事。

でも、こんなオープンキッチンのカウンターに座った時は、ベテラン店主の技を眺めながら、料理が出てくるのを待つのもいいですよね。

というか、そのほうがおいしさも倍増するはずです。

開店当初からのメニュー『ハヤシライス』（760円税込）は牛肉ではなく豚肉を使い、自家製デミソースやケチャップで作る酸味のあるソースがヤミツキになります。

席に座れば気持ちがホッと落ち着くし、真心を込めて作られた料理はうまさだけでなく懐かしさと安心感も運んでくれます。

「もう、年寄りなんだすけ、いつまでやるか分からんて（笑）」。

そう言われると、つい足を運ぶペースも上がってしまうのです。