7月4日、新潟市民プラザでKaede(Negicco)のソロライブを観てきました。
一言でいうなら、バンドメンバー4人をバックに、穏やかで有機的な音世界を鮮やかに構築した、素晴らしいライブでした!
今回のライブは、6月にリリースした新作『Youth -Original Soundtrack』を中心に構成されており、Kaede歌唱曲以外にもインストや詩の朗読などを含むこの意欲作が、生演奏で新たな輝きを見せた一夜だったと言えそうです。
ということで、この作品を一緒に作り上げた(Kaedeのライブサポートでもおなじみの)佐藤優介と語った新作インタビューをお届けします。
Negiccoとは違うアプローチで自身の表現を追い求めるKaedeの姿を、この発言からもしっかりと感じとってください。
(聞き手=編集部・笹川清彦)
●架空の映画のサウンドトラックというコンセプト作をつくりあげたKaedeさんですが、今回は全曲のプロデュース&トラック制作を担当した佐藤優介さんも一緒のインタビューです。
佐藤・実は、俺もできあがるまで完成形がよくわからない感じで向かっていたんですけど…、結果、こんな誰もやったことがないようなアルバムを作らせてもらえて、すごくよかったです(笑)。
●(笑)そう、ボーカル曲だけじゃなくインストや詩の朗読も交えて、全体でひとつの世界観を聴かせるユニークなアルバムで。ここから何を感じ、どう想像力を広げるかを聴き手に託すような作品になりましたね?
Kaede・そうなんですよ。この中のインストとか私のセリフ(朗読)を聞いて想像する風景って、多分、それぞれで全然違うだろうなっていうおもしろさがあって。個々の人の経験や観てきた映画とかはバラバラだと思うので。だから、そこは本当に聴く人に委ねている部分だと思います。
佐藤・俺、よく「いい意味でも悪い意味でも聴き流せない作品を作るね」って言われるんです。何か、普通に歌が並んでいる作品を作るのがあまり好きじゃなくて。作っていると自然とそういう方向へは行かないので…悪い癖なのかもしれないんだけど(笑)。
Kaede・(笑)いや、そこが優介さんのおもしろいところで――こっちもちゃんと向き合わないとつかめないっていう。でも私自身、アルバムは頭から全部、ちゃんと流れも踏まえて聴きたい人なので、そういう作品を一緒に作ることができてよかったですよ。
●そんなこの作品は、タイトルの「Youth=青春」がテーマです。
Kaede・今回は自分が主人公ではないアルバムなので――もう“制服”って歳でもないし(笑)。だから、本当に映画の歌を歌っている、みたいな、それこそ「演じる」って感覚で臨みましたね。
佐藤・青春って、明るい面だけじゃなく、暗い、心の影の部分もあるのがキモじゃないかと思うんです。あと、歌詞も、本当に劇中で流れているイメージで…起承転結みたいな歌詞を書くと説明しすぎって言うか。そこはなるべく余白が出る感じがいいかな、と思って作りました。
●その歌詞入りの楽曲のなかに、ムーンライダーズの鈴木慶一さんが詞を書き下ろした『生きる爆弾』という曲があるんですが、これは交流のある佐藤優介さんからのオーダーですよね?
佐藤・(鈴木)慶一さんは、作曲家としてももちろん好きなんですけど、実は俺が作詞の面で一番影響を受けた方で――「こんなことを歌詞にしていいんだ」みたいな曲を書いていらっしゃる方なので、ぜひ今回お願いしたいなと。
●Kaedeさん、この歌詞をもらったときの印象は?
Kaede・私は、慶一さんに頼んだというのを知らない状態でこの歌詞をいただいたんですね。で、「ああ…優介さん、こういう詞も書くんだ」って驚きました(笑)。
佐藤・俺だって、最初、びっくりしましたもん。慶一さんから夜中に「歌詞ができました」ってメールが来て――タイトルが、いきなり『生きる爆弾』。その時点で「うわぁ!」とか思って(笑)。でも、すごくいい歌詞なんですよ。
●ええ、とても詩的で素晴らしいです。そんな歌詞のほか、朗読なども織り交ぜながら、青春を過ごす若者のいろんな心象風景をさまざまなサウンドアプローチから感じられるアルバムっていう。
Kaede・多分、あまり聴いたことがないタイプのアルバムだから、初めて聴いた人は「…何だったんだろう?」って思うと思うんです。だけど、何回か聴くうちに何かつかめると思うので――その自分の中で何かを感じるまで聴いてもらえたらうれしいですね。
佐藤・映画にしろアルバムにしろ、「よく分からない…でも、何か残るな」って、ずっと心に引っかかっている作品もあったりするじゃないですか。これもそんな感じのアルバムになったらいいなと。
●約30分のコンセプト作、ぜひ多くの方に聴いてほしいと思います。ちなみに、初回限定盤には、3月にりゅーとぴあ能楽堂で開催したソロライブのほぼ全編を映像収録したブルーレイディスクがついていますが?
Kaede・あのライブは「ぜひ映像化してほしい」と言ってくださった方が多かったので、こういう形で出せてよかったです。有観客では久しぶりのライブでしたし…。
●僕も見ましたが、「やっぱり、生の歌と演奏っていいな!」と実感したライブでしたね。
Kaede・ええ、そこは私もすごく実感できましたね。
●最後にKaedeさん、今後のソロの動きについては?
Keade・こんなにハイペースでソロの作品が増えるのはありがたいし、継続してライブもやっていきたいです。今、Negiccoの活動ができない状態なので、また3人で集まれる日に向けて、もうちょっとひとりで修行を続けようと思っていますよ。