2018年9月にアルビレックス新潟の専務取締役に是永大輔氏が就任。
その直後に、J3降格危機に陥っていたチームが5連勝と息を吹き返した。
まさに、〝持ってる男〟ー。
来季のフロントのキーマンとなるであろう是永氏に行なったインタビューの模様をお届けします。
「クラブとサポーターというのは決して別の組織ではなく、それぞれ、アルビレックス新潟を一緒に盛り上げていくための“部門”のひとつなんです」
—2018年9月にアルビレックス新潟の専務取締役に就任されて、2019年シーズンはどういったことを行なっていくのでしょうか。
是永:クラブの収益が芳しくないという点では、シンガポールに行ったころの状況と似ているなと感じています。だからやることは、伸ばせる事業にお金を使い、余計な事業にお金を使わない、ということですね。まずは当たり前だと思うことに取り組んでいきます。
—是永さんの考える「当たり前」にどんなことが含まれるのか気になります。サポーターと密にコミュニケーションをとっていくということも、当たり前に含まれますか?
是永:アルビが誰のためのクラブなのかを考えなければいけません。アルビレックスは誰か1人のためのクラブではなく、みんなのクラブだと思っています。仕事としてサポーターとコミュニケーションをとる、という話ではないんですよ。“みんなで”いいクラブを作っていこうよ、ということを実行しているだけです。アルビレックス新潟のキャラクターや成り立ちを考えると、非常にストレートなことをしているだけなんです。
—サポーターも是永さんも“自分事”として、ということですね?
是永:そういうことです。例えば、チームが負けたとする。そのときに、クラブが悪い、というのは違うんだと。みんなが悪い、みんなのせいだと。「お客さんが減った。クラブは何をしてるんだ!」、それは違うよ、と。極端なことを言うと、みんなのチームなんだから、みんなでお客さんを呼んでこなきゃ。みんなのクラブなんだから、誰かひとりのせいではないんです。クラブとサポーターは決して別の組織ではなく、それぞれ、アルビレックス新潟を一緒に盛り上げていくための“部門”のひとつなんです
—クラブの公式インスタグラムが開設したことで、選手がより身近に感じるようになった気がします。
是永:やっていくことはまだまだこんなもんじゃないですよ。幸い、ありがたいことに今はまだメディアの方からも興味を持っていただいているので、テレビに出たいといえばテレビに出られる。だからテレビもラジオもできるだけ出て、選手にもどんどん出てもらって、アルビの今を伝えたい。とにかく、接触頻度と接触している機会を増やしていきたいです。それもまた、クラブとしての価値を生みます。
「私はアルビを、日本で一番サッカーに真剣なクラブにしたいんです」
—先日、試合開始前のスタジアム前広場にいたら、是永さんが、その現場で何かを確認している姿をお見掛けしました。どんなことを知ろうとしていたのでしょうか?
是永:試合を観に来てくれるお客さん、もっというとシーズンパスを持っていたり、後援会に入っていただいている皆さんの声が一番大事で、そういう方々を増やすためには、お客さんが今どういうことを感じているのか、ということを知ろうと見ていました。「当たり前だ」と思うことをやっているだけです。
—水面下では新しい試みをいくつか考えているということですね?
是永:はい! 「やっぱりアルビってこうあるべきだよね!」ということをやっていきますよ。
—その構想のいくつかを今お話しいただくことはできますか?
是永:それは秘密(笑)。まずは、12月20日あたりに発表できるかな? 楽しみにしていてください!
—気になりますね(笑)。話は過去にさかのぼり、かつて4万人の動員を誇ったビッグスワンがいまでは約1万5千人の観客動員数です。これについてはいかがですか?
是永:“4万人”という数字が1人歩きしていてはだめなんです。単純に4万人に集まっていただいても、しょうがないんですよ。熱量を持った、意味のある4万人にしていかないと。無料チケットを配布することばかりをしていたら「アルビはただで見られるクラブなのか」って思われる。つまりそれだけクラブとしての価値は下がる。それよりもまずはすでにスタジアムに来てくださる約1万5千人の方々の熱量を高めていくことが大事です。考えてみれば、その方たちが仲間を1人呼んだらそれだけでもう3万人ですよね。“4万人”っていううわべの数に惑わされるんじゃなくて、本当のものを作っていかないと、後に続いていかないんです。数字だけお化粧しても意味がない。逆に、熱量は最後には必ず数字につながってくると思います。
—後に続くことを、サポーターも望んでいます。
是永:ピッチ上で頑張る選手たちにとっても、彼らが「本当に新潟にいてよかったな」と思えるクラブにならなくては、という雰囲気を作りたいですね。首都圏のクラブと条件が同じなら、今は首都圏のクラブを選ぶ選手の方が多いかもしれない。けれどそうならないために、「サッカー選手として新潟にいることはこれだけの意味と価値があるんだよ」ということをたくさん作っていきます。たとえば、メッシやイニエスタのような超一流の選手を連れてきても、彼らが1年でチームを去ったとしたら、そのあとには何が残るんだろうか、と思いますよね。そうではなく、ちゃんと残るものをサポーターの皆さんと一緒に作って、本当のサッカー文化を作っていきたいんです。これができるのが、アルビレックス新潟だと思っています。僕はアルビを、日本で一番サッカーに真剣なクラブにしたいんです。
—是永さんの現在の心境を想像すると、すごくワクワクしてるんじゃないかと思うのですが?
是永:全然。想像している、決まっている未来に向かって毎日過ごしているだけなので、ちっともワクワクしてないですよ(笑)。…うそうそ、とっても楽しいですよ。
—是永さんのツイッターを拝見していると、我々と同じ目線、肌感覚でクラブを見ているなと感じます。
是永:だって僕はサポーターですもん!
—本当にそうですよね。その姿にとても親近感を覚えています。
是永:分かります。繰り返しますが、みんなで作っているから、誰かひとりのクラブでもないし、誰が偉いとかでもないんですよね。皆さんが思っていることはだいぶ分かっているつもりです。だからみなさんに向けて、「正しい方向に進んでいるよ」と実感させることを表現していくことが大事だと思います。そのための施策をいくつも行なっていきますよ!
—楽しみです! まずは12月20日あたりですね。どんな情報がリリースされるのか今からワクワクです。ありがとうございました!
是永:楽しみにしていてください! ありがとうございました!
※このインタビューは12月7日に行ないました
是永大輔
(これながだいすけ)
1977年千葉県生まれ。2008年アルビレックス新潟シンガポール(以下アルビS)代表取締役に就任。その後、アルビSはリーグ屈指の強豪チームへ。2016年、2017年と2シーズン連続で国内タイトル4冠達成。2018年9月にアルビレックス新潟の専務取締役に就任。