日本のオルタナティブ・ロックのパイオニア、the pillowsの山中さわお氏のレコーディングやツアーに参加し、氏監修による音源制作の経験もあるギタリスト、山倉勇太。
現在は新潟を拠点に活動中する彼が、ソロ1stシングル『Nothing to say』を12月7日(日)に配信リリースする。
本作はタイトル通り「言葉はいらない」をテーマにしたギターインスト作品。
サウンドのベースは本人が愛する80〜90年代の英米オルタナティブ・ロック。
ニルヴァーナやダイナソーJr.を思わせる轟音ギターが主役だが、決してノイジーではなく歌心のあるギターフレーズが印象的だ。
ギターがヴォーカルのように躍動する歌心のあるプレイが堪能できる。
リリースを控えた山倉勇太に話を聞いた。
好きなギターを素直に鳴らした。オルタナ好きに響いてくれたら嬉しい
ーー今回の作品作りのきっかけを教えてください。
自分の中にずっと、自分の音楽をちゃんと磨いて、またthe pillowsの山中さわおさんと同じステージに立てるところまで行きたいっていう目標がずっとあって。今年の春にさわおさんのライブを観させていただき、改めて感動してたくさんの刺激を受けました。その日をきっかけに、音楽に向き合う気持ちが前よりもっと強くなり、今回の作品作りに繋がりました。
ーーギターの鳴りに80〜90年代のオルタナティブロック的な印象を強く受けました。
やっぱり自分が好きで聞いてた80年代、90年代のバンドのギターの音が染み付いてるから、何も考えずにフレーズを弾いても、多分そういう音になるんだと思います。今回は特に意識的に、ダイナソーJr.みたいな感じの曲にしたいなっていうのはありました。
ーー実際に完成した『Nothing to say』のギターの音は、ダイナソーJr.ほどひしゃげてはいませんが、ほどよく歪んでいます。
そうですね、歪んでいると言ってもヘビーメタルとかの歪みではなく、まあオルタナっぽい、ちょっとぐしゃっとした感じの音色だと思います。J・マスシスのようなギターサウンドをベースに自分の好みをブレンドさせました
ーー80〜90年代のオルタナやグランジバンドを聞いていた自分が、年齢を重ねて、今のモードや気分で音を鳴らしたってことでしょうか?
そうそう。だからタイトルの『Nothing to say』も、別に言葉はいりませんよという意味ですし、実際そんなに言いたいことがあるわけじゃないんだけど、この音をいいと思ってくれた人は、こういう感覚を分かってもらえると思うんです。ヴォーカルがなくても、ギターの音から伝わるメッセージみたいなものがあるんじゃないかなと。それをどう言えばいいんだろう…ロックバンドが一番好きだっていうメッセージを伝える方法は、バンドだけじゃないという気持ちーー自分は歌も歌えないし歌詞も書けないけど、言葉がなくてもメンバーがいなくても、伝わるっていう、そういう意味が入っているかもしれません。
ーーロックバンドの音が好きだからこそ持ってしまう、縛りみたいなものから解放された作品なのかもしれませんね?
その気持ちはもうずっとあります。でも、それにこだわりすぎると、自分の中にある可能性を潰してしまうし、それはもったいないというか。音楽を作る環境や作り方もリリースできる場所も全然変わってきて、自分でやろうと思えば全部できる。その意味でも解き放たれてるかもしれないです。
ーーロックバンドの主役はギターだっていうことを強く感じさせてくれる作品だと思いました。
そうそう。やっぱりギターってロックバンドのアイコン的な楽器ですよね。テクニックは別にそこまで重要ではなくて、それよりも「あの人のギターだな」「オルタナ好きの
カッコいいギタリストだな」と思ってくれたら嬉しい。J・マスシスって圧倒的にヒーローですよね。彼にしか出せないギターの音だし、それも一発でヤバいなってなる音。気合い入っているけど、ユルいじゃないですか。その感じが理想的なんです。今作は自分が鳴らしたい音を素直に鳴らしました。この記事や僕の発信しているSNSなどをきっかけにオルタナファンの心に響いてくれたら嬉しいです。
【DISC】
『Nothing to say』/After Low Records
USオルタナティブロックを経由したキャッチーなギターフレーズが印象的。
未発表曲『song8』のデモ音源も収録。


