「月刊にいがた」さんで現在、コラム連載をさせて頂いております、田中です。毎月、新潟ロケ作品を1本ずつ、ロケのエピソードとともに紹介させて頂きたいと思っております。
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●そもそも田中さんって??
「新潟ロケ」と言ったらこの人、田中克典(たなかかつのり)さん。
元新潟県フィルムコミッション協議会コーディネーター。
現在は、東京フィルムコミッション 東京ロケーションボックスに勤めており、東京でのロケ誘致や撮影支援に携わる業務を行なっている。
田中さんは業界にも太いパイプを持ち、新潟県FC時代は、新潟県内のロケ誘致で大活躍。趣味はもちろん映画鑑賞。あとはレトロ建築物探索。新潟県出身かと思いきやまさかの関西人です。
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まだまだ寒い日が続きますが、皆さん、いかがお過ごしでしょうか? 今シーズンの東京は「大雪警報」が何回か発令され、新潟にいた頃がすごく懐かしくなりました(笑)。ということで今回も「雪景色」でロケが行なわれた作品を紹介します。
「雪が降るなか、娘が田舎から上京するシーンは新潟に行けばいいものが撮れる!」――なんとこの一言を発したのは、『男はつらいよ』シリーズをはじめ、これまでに数々の名作を世に生み出してきた名匠・山田洋次監督なんです! 山田監督にそう言ってもらえるなんて本当光栄ですね。この発言きっかけで新潟ロケが決定しました。それが『小さいおうち』です。
この作品は、第143回直木賞を受賞した中島京子さんの同名小説を映画化したものです。作品に感動した山田監督が中島さんに手紙を書いて映像化に至ったそうなんです。物語は、東京郊外のお屋敷でお手伝いさんだった親せきが遺した大学ノートを手にした青年が、そこに綴られていた恋愛模様とその裏に秘められた意外な真実を知る姿をハートウォーミングかつノスタルジックに描き出した内容となってます。出演は、松たか子、黒木華、吉岡秀隆、妻夫木聡、小林稔侍、倍賞千恵子などトップクラスの俳優が揃いました。
【あらすじ】
健史の親類であった、タキが残した大学ノート。それは晩年の彼女がつづっていた自叙伝だった。昭和11年、田舎から出てきた若き日のタキは、東京の外れに赤い三角屋根の小さくてモダンな屋敷を構える平井家のお手伝いさんとして働く。そこには、主人である雅樹と美しい年下の妻・時子、2人の間に生まれた男の子が暮らしていた。穏やかな彼らの生活を見つめていたタキだが、板倉という青年に時子の心が揺れていることに気付き…。
さて、今回ロケ地に選ばれたのは、多数の映画やドラマなどでも使われた長岡市栃尾来伝地区にある登録有形文化財の民家、諸橋家の近くに広がる広大な田園でした。
もちろん雪が降るシーンの撮影だったので、雪の魔術師である長岡ロケなびの支援のもと撮影が敢行されたのですが、なぜか雪が降らない。雪は積もっているのに晴天が続いてしまい撮影が進まない…。山田監督の専属スタッフが3度来県してトライしたが雪が降らない…。そこで登場したのが大型の扇風機です! 雪を砕いて降雪を見事に表現しました。
そして監督が付近の景色にも魅せられてしまい、急遽、お墓のセットを建てたり、郵便配達役を入れたりと、田舎の冬を表現した美しいシーンが撮れました。また、降雪を待つ山田監督と黒木さんが諸橋家の囲炉裏で暖をとり「あったかい!」と何度も呟き、ゆったり談笑する顔、そり遊びをする監督や出演者がとても印象的だったとロケ地となった諸橋家の諸橋さんは語ります。
なんと山田監督は、その後の夏に、田園から見える雲だけを撮影するために来県したそうなんです。それは監督のロケ地への敬服の形だと深く感じました。
そうそう! 黒木華さんはこの作品で「第64回 ベルリン国際映画祭」で銀熊賞(女優賞)に輝き、国内でも「第38回 日本アカデミー賞」最優秀助演女優賞を受賞しました。素晴らしい!
『小さいおうち』を観たい方はDVDで!
●新潟ロケ地
長岡市(栃尾来伝地区)
●作品
『小さいおうち』(2014年公開)
監督●山田洋次
出演●松たか子/黒木華/片岡孝太郎/吉岡秀隆/妻夫木聡/倍賞千恵子 ほか
発売・販売元●松竹
価格●DVD3,800円(税抜) 発売中