ユーチューバーとして華々しいデビューを飾った坂本冬美。
そこで、今回の動画配信動機に迫る超ロングインタビューを敢行!!
インタビュアーは『坂本冬美、語る』を手掛けた棚橋和博。
3回に及ぶ動画の解説。
そして未だコンサート等が解禁されない現状の中、大物アーティストである坂本冬美が何を思うのか?──必読の内容をお届けします。
──第一回目のその時点で、「次もやりましょう」とおっしゃってますね?
(笑)そうそう、「これはやらなきゃダメ」って言ってますもんね。もうね、やりたかったんです。
──次は決まってなかったんですね?
全く決まってなかったんです。
──とりあえずは一回やってみようという?
そう、リクエストを募っているからちゃんと配信はやりましょうと。でも、自分がやりたいもんだからあんな風に言っちゃったんです。鈴木さんもレコード会社のスタッフさんも、「あっちゃー…何か、その気になっちゃったよ」ってことになって(笑)。
──(笑)ファンの方々の書き込みを拝見すると、驚いたと同時にとても良かったという総じて好意的な反応でした。御覧になられましたか?
鈴木さんに教えてもらって見方を覚えて何度か拝見しました。いい感想を書いて下さっている方が多かったので良かったですよ。私は怖がりなので自分のブログは誰からもコメントを入れてもらわないようにしているんです。そういうのを見ると気にするタイプですから。
──なるほど。で、話をYouTubeに戻しますが、第二回目の幸楽(泉ピン子)さんは誰がブッキングされたんですか(笑)?
あれは鈴木さん。二回目をやるとなったら一回目と同じっていうのは何なんで、ピン子さんにお電話してみましょうよと。で、ピン子さんにお願いできますか? ってお聞きしたら、「いいよいいよ!! 電話だけでいいの?」って。ピン子さんもYouTubeというものを今回私ので初めて見たっていうんですよ。で、その後に、「今度またいつやんの?」ってずっと言われてます(笑)。で、「いや、三回で終わりですから」って。そしたら、「いいよ、特別編をやりなよ。やらないの?」って(笑)。
──ピン子さんとは舞台でご一緒されました。私も拝見させていただきましたが、その時のピン子さんの幕間のひとり喋りは見事でした。その中にも、そして今回の電話のご出演の中でも、やはり坂本冬美の大ファンというのが伝わりますね?
はい…ありがたい限りです。でもね、今回のYouTubeで、私がこんなにもバカだとは思わなかったでしょうねぇ(苦笑)…でもね、「そこがいい」って言うんですよ。「(今回のYouTubeで海外のファンからもらった英語の手紙を読んだ件で)英語なんかも知ったかぶりして練習してやるよりも、わからないんだからあのままでいいんだよ」って言って下さるんですよ。
──うんうん、泉ピン子さん、さすがです。改めて彼女の凄さを思い知らされます。
とにかく熱くてまっすぐな方なの。だから熱量が凄いんですよ。もう、毎日のようにお電話をいただいて…多い時は4回くらい(笑)。で、今年は熱海の自宅に帰ってらっしゃって。御近所の方が筍を掘ってきてくれたからって6回も送って下さった。糠(ぬか)まで一緒に送って下さったんです。私はその為に寸胴の鍋を買いましたけど(笑)…。
──(苦笑)灰汁抜きのお世話まで?
そうそう(笑)…ですからそれを茹でて。で、それを「二葉(百合子)先生にも食べさせてあげて」っておっしゃる。で、私が届けさせていただいたり…もうね、情の深い方なんです。
──坂本さんはピン子さんからの影響を凄く受けていますよね?
そうですねぇ…とにかくあの方のパワーは凄いですからね。さらにピン子さんの周りにいらっしゃる方もそうそうたる面々で。私なんかの歌の世界とは別世界の方。でも、舞台上のこととか教えて下さることも沢山あって。とにかくスケールが桁違いですからね。
──凄い方に気に入られちゃいましたね?
そうですねぇ…有難いですねぇ。そんな御縁なんて作りたくても作れないのにねぇ。
──ピン子さんの登場は第二回のハイライトでした。で、第三回のハイライトは、セーラー服を着た(忌野清志郎と細野晴臣、坂本冬美の3人で組んだユニット、HIS(ヒズ)活動期は学生服とセーラー服が定番コスチュームだった)ということに尽きると思うんですよねぇ(笑)…。
(苦笑)ねぇ? びっくりしましたよねぇ。私、本当に知らなかったんですよ。
──(笑)本当ですか? セーラー服を投げられてから気がついたんですか?
(苦笑)そうですよ!! でなきゃ、あんなリアクション出来ません。そんな演技力、私にはないですもん。鈴木さん、あれをどこに隠し持っていたんだろうと思ってびっくりでしたよ。(『あばれ太鼓』で叩いた)太鼓は事前に用意されていましたから。「叩くのは嫌だ」と言いつつも、せっかく買ってきてくれたんだからって叩きましたけど、でもね、セーラー服は全く想像していませんでした。
──しかしそれを坂本さんが躊躇なく着たことに驚きましたが(笑)?
(苦笑)いや、だってあそこで…今さら気取ってもしょうがないですよ。
──上を着るくらいは仕方なくするとは思うんです。でも、下のスカートまで履くっていうのは…。
上しか映らないから下はジャージっていうのは嫌なんですよ。セーターを着て下はジャージっていうのも嫌。一応セーターを着たら下はジーパン履いたりスラックスを履いたり…上がセーラー服で下がジャージなんて戦後のモンペみたいになっちゃうじゃないですか?
──真面目な性格なんですねぇ。でも、まさかの生着替えみたいなものですよ。
(笑)まぁ、そうですね。でもね、別におばさんだからどーってことないわよ。私が20代だったら恥ずかしくて出来ないですよ。もう、この年になったら恥ずかしいとかってないですもの(苦笑)。
──いやいや、坂本冬美ですから(笑)…でも、セーラー服、意外と上手に着れたっていうのに驚きましたが?
(苦笑)そうですかねぇ…でもね、鈴木さんのお陰というかナイスアシストですよ。
──しかし、こんな機会じゃないとHISの曲は唄うことはなかったでしょうね?
そうですね。リクエストも何人かの方からいただいていましたからね。二回目は中村あゆみさんが書いて下さった『アジアの海賊』や、さくらももこさんと宮沢和史さんの書いて下さった『花はただ咲く』を唄わせてもらったんですが、そこはやはりYouTubeを意識し、普段私のことを見られない方とか初めて私を知って下さる方に、これまで私はいろんなことをやって来たんですよっていうのをさりげなく知ってもらいたいというのがありました。で、今回のYouTubeの舞台となったCD棚にはずっとHISのレコードを並べていましたけど、やっぱり清志郎さんを出さないと収まらないっていうのが自分の中にあって。で、鈴木さんに、「私、『幸せハッピー』唄いたい。カラオケありますか?」と聞いたんです。ほら、私達のジャンルだと必ずカラオケっていうのを録りますけど、清志郎さんと細野さんとの時はカラオケを録ったかどうかっていうのが自分の中で記憶になくて。で、探してもらったんですが、何のことはない、「CDにちゃんと入ってますよ」って(笑)…ところがそこには残念ながら清志郎さんと細野さんのコーラスが入ってないんです。それでコーラスを鈴木さんに頼んでやってもらったんですよ。
──うんうん、上手でしたよ。
そう、なかなかうまかったですよね。で、そうなると清志郎さんと細野さん、おふたりの声が一切聴こえてこないのは寂しいからってことで『HISのテーマ』を流し、そこから『幸せハッピー』に行くって形にしたんです。
──なるほど。で、『幸せハッピー』からゴスペル調の師匠・猪俣公章作の『星に祈りを』。そして『心の糸』(1995年、阪神・淡路大震災支援を目的にリリースされた楽曲。香西かおり、伍代夏子、坂本冬美、長山洋子、藤あや子という豪華5人の演歌姫による歌唱が話題となり約10万枚を売り上げ、収益金約3000万円が日本赤十字社兵庫県支部へ義援金として寄付された)という3曲の流れは圧巻でした。
ああ、そう言っていただけると嬉しいです。『心の糸』なんかはちゃんと機材を駆使し編集出来る人や他の4人にも頼んでリモートで唄ってもらえたらいいのになって思うけど、そこは今回…不器用な2人なのでご勘弁ください。
──いえいえ、逆に貴重です。さて、足早に今回のYouTube3回のことをお聞きしました。で、これを3回で終えようと思ったのは何故ですか?
これはね、ダラダラやっても面白味もないでしょうし、もし、また何かやるとしたら形を変えてやった方がいいなって。今回のような40~50分の長いバージョンを何回もやってもしょうがない。これ以上バカさ加減が広がるのも困る(笑)…これからの路線が変わってしまうといけないし…。
──(笑)あっはは…確かにイメージは大事ですからね。
あれくらいがちょうどいいかなぁって。何でも行き過ぎると飽きちゃいますからね。
──ピン子さん言うところの、スナックのママが見れるのはあの3回のみと?
そう、スナックバージョンはあの3回ですね(笑)。
──我々聴き手も演者も貴重な3回であったと?
はい、そうですね。本当にいい経験をさせていただきました。でも、今の時代って凄いんだなぁって感じましたね。私はアナログ人間で何も出来ませんけど、ああいうことなんかが世界に一瞬にして届くわけでしょう?
──アメリカでもフランスでも一瞬に届きます。
ねぇ? そしてその反応がすぐに返って来る。だからいい時代ですよね。こんな時代じゃなかったら、もう、再放送の番組だけしかないわけで…「今、私は元気ですよ」って発信も出来なかった。だからある意味いい時代だというのを感じましたよね。
──コロナ騒動がなければやっていませんね?
勿論です。いい勉強をさせていただきました。