それにしても、今期の攻撃の中心レオナルドというのは不思議な選手だ。
ここ直近、2か月に渡り、その戦い方に文句をつけていたら、気がつけば3連勝し、無理と思えていたプレーオフ圏内も見えてきた。
残りの対戦カードをみると、下位チームが多く、今期の阪神タイガースばりに怒涛の連勝で、最後の1枠に滑り込むミラクルも期待できるが、結局は巨人に力負けした事実があるので、この例えはやめよう。なお、メディア的には、これをセルジオ越後効果という(冗談です)。
しかし、3連勝したといえども、内容が劇的に改善されたようには思えない。
愛媛FC戦では、本間至恩の素晴らしいステップワークからのゴラッソによるワンチャンをものにし、1-0で勝利したが、前半から相手に決定的なシーンを何度も作られており、相手の決定力が高かったら(J1だと間違いなく決めてくる)、どう転んでいたかわからない。
もちろん、私とて、上げ足をとったり、水を差すことが本望ではない。
前々から言っているが、どんな強いチームといえど、完勝の試合など、年間を通じてそう多いわけはない。ただ、一つ言えるのは、強いチームは、負ける試合を拾い、引き分けで終わりそうな試合を勝ち切る。
そういう意味で、ようやくチームが上昇気流に乗ってきたのだろう。
好調の要因は守備システムの安定だろう。
熱心なサポーターなら、当然知っていようが、新潟の得点数というのは実はJ2トップである。
現在、得点王を走るレオナルドの存在も大きいが、新潟といえば得点力不足が常に付きまとっていたイメージがあっただけに大いなる変貌である。
もっとも、その得点力を持っていながら、この順位に甘んじていたのは、失点が多かったからであり、それが8月31日のレイソル戦以降、すべて1失点以下に抑え、7戦連続負けなしの安定した戦いを生み出している。
私もアマチュアチームで監督まがいのことをしているが、当然考えるべきは、持ち駒の中でどう点を取るかになる。
相手が仕掛けてきたところをカウンター気味に、よりゴールに近い位置でボールを奪った方が点を取れると考えれば、そのタスクを実行できるメンバーでそういう戦い方を志向するかもしれない。良いサイドアタッカーと、点で合わせることが得意なFWがいれば、サイドアタックがうまく機能するように、狭いところでボールを回し、ディフェンスを寄せてから一気にサイドに展開して、スピードアップを図るサッカーを志向するかもしれない。
いずれにせよ、このようなゴールからの逆算で戦い方を組み立て、そのうえで、どのように守備をするか(どこでボールを奪うか)、相手の攻撃を無能化するかを考えていくのが普通なのではないかと思う。
自陣にしっかりリトリートして、2ラインを引いて守り、速攻を仕掛けるのが、今期の戦い方である。現在の新潟の得点源といえば、レオナルドであることに異論はないが、彼の特徴を最大に生かすということと、失点をとにかく減らそうという中で、苦渋の決断で、生まれた戦い方なのかもしれない。
それにしても、今期の攻撃の中心レオナルドというのは不思議な選手だ。
歴代のブラジル人選手達と比較しても、スピードがあるわけでも、圧倒的な技巧があるわけでも、フィジカルが強いわけでもない。
さらに、献身的に動くという選手でもなく、それが今季の戦術を狭めているとも言えるが、なぜか点を取る。
思えば、昔、ドイツに遊びに行ったとき、一緒に混ぜてもらった日本人チームの方が断然うまいが、相手の移民チームに下手だけどやたら点を取る選手がいて、首を捻ったことを思い出した。
今年のチームは、私的にはこれまでの新潟とちょっと違う。
変わっている。
でも、この違和感も、レオナルド同様に不思議な魅力に思えてきた。ドラマティックな結果となれば、実はここ10年で最もインパクトのあった年になるのは間違いない。残り数試合、そんな期待を込めて応援したい。
勝て!アルビレックス!
【浅妻 信】
新潟市出身。Jリーグ昇格時からアルビレックス新潟を追い続けるとともに、本業のかたわら、サッカー専門誌などに執筆している。さらにASジャミネイロの監督としても活躍中