これがJ2か。昨年に引き続き苦悩のシーズンだ。
8月14日の東京ヴェルディ戦は、友人から席を用意してもらい、久しぶりにSS席での観戦となった。その日は、東京から息子も戻ってきていて、久しぶりのビッグスワンを本当に楽しみにしていた。
試合前、Eゲート前をウロウロしてみる。フラダンスショーから麻雀教室まで、縁日のような賑わいで、彼が足繁く通った10数年前とは様変わりもいいところで、ここだけでも十分に楽しめる。しかし、このような努力が、チームの成績と観客動員に結びついていないのが本当にもどかしい。
試合に移る。
新潟は自陣に2つのラインを引いて、ヴェルディの攻撃を待ち構えるが、ヴェルディもリスクを冒して、新潟のラインの中にどんどん人が入るような動きも見せず、ブロックの外でボールを回すだけに終始する。
2ラインの前方に位置する2人、レオナルドとシルビーニョも連動してプレスをかけるには厳しい状況だが、かといって、新潟が守備を前方に押し上げるわけもなく、率直に言って、見ている方はひたすら退屈であった。
新潟とすれば、ボールが取れても後ろの方。そこから最前線に素早くボールを出そうとするが、先ほどの説明の通り、シルビーニョとレオナルドの周りには6人ぐらいのヴェルディの選手が待ち構えていたので、攻撃が繋がるはずもなく、たまに前で取れた時にだけ攻撃っぽくなるが、それのみ。
柔道の試合であれば、双方に指導が入りそうなレベルである。
後半になると、さすがに前から人数をかけて守備にいくようになり、お互い攻撃のチャンスも出てきて、ゴールに迫るシーンも出てきて盛り上がり、特にラストは怒涛の攻めであったが、無情のタイムアップ。
1-1のドローで、J1昇格の道はさらに遠のく結果となった。
今日は辛口でいきたい。
今期の新潟のサッカーとはどんなサッカーなのだろう。
攻守にアグレッシブというのが、よく知られる新潟のサッカーの表現だと思うが、前半のサッカーなどは、相手の出方があったとはいえ、弱者のサッカーである。
カウンターを狙うのは良い。
しかし、攻撃にスイッチが入った時の迫力や鋭さも皆無。
あるのは前線のブラジル人の個人能力頼みであるが、この日のレオナルドは空気に等しかった。
確かにこれだけ引いて守れば失点はある程度防げるのかもしれない、しかし、このサッカーでは、仮にJ1に復帰したとしても、あっという間にJ2に逆戻りだろう。
田中達也の扱いも酷い。このような試合展開で、最後までベンチに置いておかれるフォワードの気持ちを思うと切ない。田中達也といえば、前線からの激しいフォアチェックと、よく動いて、高い位置、特に相手最終ラインの前で起点となる動き。私の見方が悪いのかもしれないが、今の新潟のサッカーとの相性はかなり悪いように思える。
乾貴士が所属しているスペイン1部リーグのエイバルというチームがある。市の人口は3万人に満たず、スタジアムの収容人数は7000人余り。そんな低予算クラブが、チームが昇格以来6年連続となる1部リーグを戦っているが、ここのチームのサッカーは勇猛果敢だ。バルセロナが相手であろうとスタイルは変えない。全員が前から守備に行き、一人も余らない。攻守の切り替えも極めて早い。前へ前へ。かといって、ロングボール戦法ではない。とにかく、サイド攻撃を中心にスピーディでエネルギッシュなのだ。
私は決して前からプレスをかけるサッカーの信奉者ではない。
しかし、ここ数年の新潟の試合を振り返っても、最も印象に残っているのは、2013シーズンのリーグ終盤、優勝争いをしているマリノス相手に、アグレッシブな守備からのカウンターで完勝した試合だ。
私的には、これが新潟だという試合を、今期、まだ見せてもらっていない気がする。
今年はこんなことばかり書いている気がするが、ここまでくると我慢比べのような気もしてきた。
もちろん、私が謝る展開を期待するのは言うまでもないが。
これがJ2か。昨年に引き続き苦悩のシーズンだ。
【浅妻 信】
新潟市出身。Jリーグ昇格時からアルビレックス新潟を追い続けるとともに、本業のかたわら、サッカー専門誌などに執筆している。さらにASジャミネイロの監督としても活躍中