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女性ヘルスケア専門医に聞く月経前症候群(PMS)の対処について

  • 情報掲載日:2023.06.16
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

月経の周期により、体調変化が起こる女性。新潟大学医歯学総合病院の産科婦人科医師 小林暁子 先生から専門医としてお話をいただきました。

産科婦人科 医師 小林暁子 先生 産婦人科医を志した理由は、女性であることを活かし、手術手技に興味を持ったから医師の道へ
産科婦人科 医師 小林暁子 先生 産婦人科医を志した理由は、女性であることを活かし、手術手技に興味を持ったから医師の道へ

Q.新潟大学医歯学総合病院内の産婦人科外来の中に「女性ヘルスケア外来」とありますが、その概要をお教え下さい。

A.産婦人科の中に、四大分野というものがあり、その中にはもちろん①お産、周産期系 ②腫瘍 ③不妊というところがあるのですが、忘れてならないのが、④ヘルスケアという分野なんです。最近ヘルスケアという分野がしっかり確立してきたなか、大学病院内で女性の一生をトータルで診る、ケアするという理念で始めた外来です。
 生まれてすぐに男の子か女の子か判らない子の性別判定という意味合いのヘルスケアもありますし、女の子が成長し、思春期の悩みの一つ、月経が始まるや、月経が無いという話もあります。もちろん成熟期で月経が繰り返し起こる中で、身体的な不調はもちろん、心の不調などがある場合はそのケアもしないといけません。また更年期障害など更年期は有名な時期ですし、老年期というのもあります。老年期には骨盤や臓器が緩み、おしっこの問題も出てくるのです。尿路の疾患や骨粗しょう症、抗がん剤によるホルモンの乱れなど、不調は女性ホルモンが非常に大きく関わっています。そのような女性の一生を診るということです。予防や治療など人生100年時代を自分らしく健やかに生きるための医療、日々の体調不良をひとりで悩まず外来で相談できる医療の一つが「女性ヘルスケア外来」です。

Q.「月経前症候群:PMS(ピーエムエス)」に関して、なぜ起こるか原因も含めてご説明ください。

A.具体的にPMSというのがどうして起こるかは具体的には分かってないのが現状ですが、月経前に卵巣から分泌される2つの女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)がどちらも分泌が高い状態になっています。それが急激に減少して出血(月経)が始まります。身体がこのホルモンの変動に対応できず、頭痛やめまい、お腹や乳房の張り、下痢や便秘などの身体症状が出現します。とくにPMSは月経前3~10日間続く、精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するものを言います。
 患者さんのなかには、ホルモンの調節がうまくいかず、まるで更年期障害みたいな症状が出る人や、気分の落ち込み、イライラなど、精神状態が不安定な場合は月経前気分不快障害(PMDD)と診断される場合もあります。どちらの疾患もホルモンの変動を調節することで症状を軽減することができます。また漢方療法を併用して自分に合った治療を選択することもできます。女性はそんなホルモンの大きな波に対応しなくてはならないのです。

Q.個人差があるかと思いますが、PMSではどのような症状が多いのでしょうか?

A.悩まれて病院まで来られる方は精神症状がきつい方が多いように思います。情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害などですが、お薬のコントロールも難しい方は、精神科とコラボレーションして治療にあたっています。自律神経症状としては、のぼせ、食欲不振、過食、めまい、倦怠感などです。身体的症状として腹痛、頭痛、腰痛むくみ、お腹の張り、乳房の張りや痛みなどがあります。

Q.PMSの患者の主な年齢層と、受診の経緯をお教え下さい?

A.30~40代の方もいないわけではないですが、若い方10~20代の方がとても多いと思います。多くは頭痛や腹痛、むくみなどの身体症状を訴える方が受診しているかと思います。併せて子宮内膜症などの月経困難症を理由に受診される際に、一緒に訴えてくださるケースも多いように思います。しかし明確な身体症状でなくても、月経周期ごとに繰り返されるイライラや抑うつ、精神的に弱い人はPMDDと診断される人もいらっしゃいます。そんな生活に支障があるような場合は、早めに自身でPMSである可能性を思いついてほしいです。そのためにも性別や年齢を問わず、多くの人にPMSを知っていただき、女性の健康に関心を持ち、助け合う心を持ってもらいたいと思っています。「月経に付随する不調は病気じゃない」という考えは、時に女性を傷つけている場合もあるので注意したいです。

Q.治療指針や治療法・セルフケア、PMSと女性ホルモンのかかわりについて教えてください。

A.治療指針としては、まず本当にPMSなのかを探ります。甲状腺の疾患など別の病気の場合もあるからです。医師の診断処方された薬を続けながらでいいので、症状日記をつけてもらうことから始めます。月経前10日間くらいから始まる不快な症状なので、本当にその時期か、どのように症状が良くなったり悪くなったりするのか、私としては基礎体温も日記のように2周期(生理周期の2回分)を書きとめ、症状を理解し把握することから始めます。PMSと付き合うために、栄養面や睡眠などの生活改善はもちろんですが、自分のリズムを知って、気分転換やリラックスする時間を作り、自分が心地よいと思えるようなセルフケアを探してみることをお勧めしています。そしてPMSだった場合は、カルシウムやマグネシウムの摂取、カフェイン、アルコール、喫煙を控えるなどの生活指導を進め、指導でうまくいかない人はピルを始めるということになります。このピルが冒頭に申し上げた波をなくしてくれる働きをしてくれます。しかし症状が重い場合には仕事の負担を減らすことが治療になる場合もあります。治療法はさまざまありますが、排卵抑制療法、症状に対する治療では、鎮痛剤、利尿剤、抗アルドステロン療法、精神安定剤、選択的セロトニン再取り込み阻害薬物療法、漢方療法など、個々人に合わせ治療計画を立てます。また医師や看護師からのポジティブな励ましも大事だと私自身思っています。

Q.エストロゲンに似た大豆イソフラボンの代謝産物であるエクオールに関してその可能性を教えてください。

A.エクオールは女性ホルモン様作用があり、腸内細菌によってイソフラボンの一種であるダイゼインから代謝される非ステロイド性のエストロゲン様物質です。それを産生できる人の割合は半々と言われています。大豆由来の成分で、サプリメントを直接(外から)エクオールを摂取することも出来、有効性を示す論文も多く出ています。そのエクオール補給は、全ての女性、老年期においても意味はあると思っています。体調や髪、肌、関節(骨)など女性ホルモンが作用する場所は体中にあるということだと思います。一例としては女性の閉経前後の更年期女性におけるホットフラッシュの回数が低下するという論文もあります。そんな作用が女性は波のように変動しながら生きているということなのです。

Q.女性ホルモンであるエストロゲン、プロゲステロンの働きを簡単に教えてください。

A.エストロゲンは女性らしさを作るホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育、維持させる働きを持っています。女性らしい丸みのある体型や、肌を美しくする作用もあるホルモンです。その分泌量は毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、およそ20年間の性成熟期を経て、ホルモンを分泌する卵巣の機能は徐々にお休みモードになります。45~55歳頃の更年期になると分泌量は急激に減ります。
 プロゲステロンは排卵直後から分泌量が増えるので妊娠準備のためのホルモンともいえます。基礎体温を上げ、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を安定させ、乳腺を発達させる働きもあります。妊娠が成立しなければ、排卵の1週間後くらいからプロゲステロンは減り始めます。さらに1週間くらい経つと、妊娠のために厚くなった子宮内膜がはがれる「月経」が始まるという流れとなります。

Q.ストレスと女性ホルモンの関係性について先生のご所見をお聞かせください。

A.社会に出てキャリアを積む大事な時期が、女性にとって結婚や妊娠の適齢期でもあるため、ストレスが溜りやすい時期と言えます。結婚か仕事かで悩み、結婚すれば仕事と家事の両立に悩み、30歳を過ぎると子づくりのタイムリミットを見据えて焦る。実に葛藤が多い時期なのです。そういうストレスとホルモン分泌には密接な関係があります。ホルモンの中枢を司る脳の視床下部は心の影響を受けやすく、ストレスを感じるとホルモン分泌量に影響を与えたり、月経の周期が乱れたりします。強いストレスを受けるとエストロゲンの分泌が減少して月経不順や無月経に陥ってしまうこともあります。過度なダイエットも同じような症状が出る場合もあります。そして無月経が長期に続くと20、30代の人でも、ホットフラッシュや発汗など更年期と同じような症状「若年性更年期障害」が出現する場合もあり、長期間放置すると、骨がもろくなり、妊娠が難しくなりますので早めに医師に相談してほしいです。

Q. PMS患者の実際の先生の治療の進め方、概要を教えてください。

A. 最初に問診をして、患者さんの生活の見直しを考えます。
 栄養面、生活リズムの改善が基本となりますが、それらを見直し改善するだけでも、少し良くなる方もいたり、きっかけになる方が結構います。
 その上で、患者さんの希望、治療の選択肢を考え、患者さん自身に合う合わないを考慮して治療を進めていきます。人によっては、友人から治療法に関して詳細を聴いてから受診する方もいますので、意見を丁寧にお聞き致します。
 その後、症状をみて漢方薬、サプリメントを活用致します。漢方に抵抗があったり、飲みにくいという方には、サプリメントをセルフケアとして活用致しますが、月経前は、栄養バランスの良い食事に加え、カルシウム、ビタミンB1・B2・B6、ビタミンD、鉄などの摂取を意識しすることをお伝えしています。さらに注目の成分として、ビタミンEの仲間であるγ-トコフェロールとγ(ガンマ)-トコトリエノール、前述した大豆イソフラボンからつくられる「エクオール」、そして不足しがちなミネラルの「カルシウム」が注目されており、この4成分を摂ると、月経前の顔のむくみやイライラ症状の軽減を確認したという報告もあります。これらサプリメントは食品なので、手軽に使いやすいメリットがあると感じております。これらで診療を進めていく方はこれで継続していきます。
 一方、より症状等のきつい方には、低用量ピルを使用致します。また、精神症状が強い方には、SSRIと呼ばれる薬剤を最初から使って治療を進めていきます。

Q.正しい知識の習得と今後の受診の必要性をお願いいたします。

A.子宮がんの検診や月経の不調、メンタルケアなど相談できる環境を作ることは大切で、女性は産婦人科の主治医を持ってもらいたいです。病院や医院に足を踏み入れると「妊娠したと思われる」とか、「誰かが見ていたら」など、もうそんな時代じゃないので、かかりつけ医を持つようにしてほしいです。私は最近「産婦人科医は女性の一生の伴走者」という言葉を耳にしました。女性の一生と伴走し、頼りにされ、援助することがヘルスケアだと思っています。心身の悩みを解決へと導く、かかりつけ医を見つけて、快適な一生を過ごしてほしいです。

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