古町で創業150年の歴史をもつ老舗書店、萬松堂古町本店。出版不況が叫ばれて久しく、カフェやベーカリー、ネイルサロン併設など様々な個性を打ち出す書店が増える中、地域に親しまれている“まちの本屋さん”は様々な試みを行なっている。
出版過多により出版社に眠っている状態のよい在庫本を買い取り、2階フロアすべてをアウトレットブックコーナーとしている。
また、「島屋六平」という出版社を立ち上げ、児童向け絵本「ろっぺいブックス」の販売を開始した。
このろっぺいブックスには、売り手としてお客様と接する最前線である書店員の視点を加味しているため、内容について詳しく説明し、自信をもってオススメできる本だという。
幼児期に紙の本に触れる体験の提供により、その子供が大きくなっても、紙の本の衰退を防ぐ狙いもあるという。
店長の中山さんが手に持っているのが、「ろっぺいブックス」シリーズ。現在は第2弾、計8冊発売されている。
中山さん、取材に際して、おすすめの本を紹介してくれた。
まずは「本・読書」というキーワードの3冊。左の『新しいおとな』(石井桃子 著)は、幼い日の読書体験と「かつら文庫」の実践から生まれた、子供、読書、絵本、本づくりをめぐる随筆集。
真ん中は幻冬舎社長の見城徹氏による『読書という荒野』。“読書とは「何が書かれているか」ではなく「自分がどう感じるか」だ”と記してあり、読書による正確な言葉の習得と自己検証、そして深い思考こそその人の人生のバックボーンとなる、単なる認識ではなく実践を駆り立てるもの。
右は東京・下北沢で「本屋B&B」という新刊書店を経営する内沼晋太郎氏の『これからの本屋読本』。“本と本屋の魅力”、“本を仕入れる方法”、“小さな本屋を続ける方法”の3つを柱に、著者が経営者・ブックコーディネーターなど本と様々な関わりをもち、本屋について考え、調べてきたことを、本や本屋が好きな人たちへ伝えている。
これらはどちらも暮し手帖編集部 編。左の『戦時中の暮しの記録』は、終戦から22年が経った1967年、戦時下の庶民の暮らしを記録しようと一般読者に投稿を呼びかけ、人々の生活の記録が記されている。
右の『戦中・戦後の暮しの記録』は1948年に創刊された『美しい暮しの手帖』以降、刊行を続けてきた『暮しの手帖』の70周年記念出版。戦中・戦後を市井の人々がどう生きていたのか、手記、手紙、絵、写真で伝えている。
戦争の最中、爪痕残る戦後を生きた人々のリアルな体験に触れ、戦後70年以上たった今でも、戦争の記録・記憶を風化させてはいけない、そんな思いを感じさせられる2冊。政局、世界情勢が決して安定しているとは言えない今こそ読みたい。
随筆家・イタリア文学者、須賀敦子が若き日に書いた未発表自筆の44編の詩集を、編集者である湯川豊氏が発見し、編集、没後20年に際して発売された『主よ 一羽の鳩のために』含めた、3冊。
幼少期より本の虫として育った中山さんによるセレクト。萬松堂のHPのリンクがありますので、そちらもご覧になってみてください。
いよいよ読書の秋。いつも目線の先にはスマホ、そんな人も多いはず。ふらっと本屋によって、この秋のお供を探してみてください。
Information
萬松堂 古町本店
- 住所
- 新潟市中央区古町通6-958
- 電話番号
- 025-229-2221
- 営業時間
- 10:00~19:30(日曜・祝日は~19:00)
- 休み
- 無休
- 駐車場
- なし