ユーチューバーとして華々しいデビューを飾った坂本冬美。
そこで、今回の動画配信動機に迫る超ロングインタビューを敢行!!
インタビュアーは『坂本冬美、語る』を手掛けた棚橋和博。
3回に及ぶ動画の解説。
そして未だコンサート等が解禁されない現状の中、大物アーティストである坂本冬美が何を思うのか?──必読の内容をお届けします。
──さて、そろそろ本業のお話を伺いたいのですが、令和初のシングル曲『俺でいいのか』を昨年夏にリリースしました。少し前のインタビューで、「そろそろ男唄を唄いたい」とおっしゃっていました。坂本さんには『あばれ太鼓』や『男の情話』という男唄の原点がありますが、でもこの曲は、「俺についてこい」ではなく、「俺でいいのか?」と相手の女性に聞くという、少し艶やかな男唄になっています。この曲をいただいた時にどう思われたんでしょうか?
これ、作る段階で──ご存じかと思いますが、ディレクターの山口さんは私のこれまでの作品を熟知しています。その上で常に何が足りないのかを分析して下さっている。今まで唄っていない世界観。また、同じ男唄でもどこを攻めればいいのかを私とともに考えて下さる。次は絶対こういうタイプだねっていうのがお互い意見の一致を見たんです。それが美空ひばりさんの『おまえに惚れた』なんですよ。それこそちょっとカラオケを意識した、口ずさみやすい優しい男唄──この路線を狙いたいっていう。だからもう、この路線っていう決め打ちですね。
──で、曲は徳久広司さんに依頼しようと?
そうです。で、山口さんが、ひばりさんの『おまえに惚れた』を作曲したのは徳久広司先生だから徳久先生に頼みたいと。うんうん、いいんじゃないですかって。で、詞はどうしようってなった。で、そういう詞を書けるのは吉田旺先生じゃないか? 先生にお願いしてみましょうってことになったんですよ。
──吉田旺先生と言えば、「♪~赤いセロファン」の唄い出しの…昭和の香りのする『風うた』を書いて下さいましたよね?
そう、で、ちあきなおみさんの『喝采』ですよ。
──そうそう、ちあきさんのその後の名曲『劇場』や『夜間飛行』を書かれ方でもあります。意外と坂本さんは吉田先生とはご一緒されていません。
そうなんです。ですから『風うた』が初めてなんですね。
──ということは2曲目ですか?
そう、2曲目です。
──凄いカードを引いたんですね?
そう、で、昨年先生は、この『俺でいいのか』で作詞大賞の優秀作品賞を獲られた。今、先生はお身足が不自由で車椅子なんですけれど、わざわざその表彰式に出て来て下さった。本当に久しぶりにそういうところに出てこられた。先生も喜んで下さっているんだなぁってその時思ったんです。
──全世界的にシングルでヒット曲を出すのが難しい時代です。でも、この『俺でいいのか』が、じわりじわりと売れ続けていたそうですね?
そうなんです。久しぶりにそういう手応えを感じている曲でした。コンサートで唄うと一緒に口ずさんでくれたり、あ、知ってるよと言って下さる声が本当に多かった。久しぶりの感覚だなぁって感じていましたね。今回、この曲が何となくいい調子で来ていたところ、コロナのことがありましたが…でも、もうひと押ししなければ吉田先生に申し訳ない。せっかく書いて下さって、作詞大賞の時にああやってお越し頂いた。先生の思いも感じましたから、何とかこれをもっと皆さんに親しんで頂ける楽曲になるようにと新曲も出さなかったんです。そういう思いでギターバージョンを作って頂いたんですよ。
──唄い直されたんですよね?
勿論です。斎藤功さんのギターで。
──今回のような、「追撃盤」というような形でリメイクする経験なんておありですか?
昔、猪俣先生の作品でセリフ入りにするとか、そういうことはありましたけど、改めてこういう形で同じ曲を出すっていうのはないですね。
──「追撃盤」のテイクを聴かれてどんな風に感じますか?
斎藤さんって同郷なんです。で、何度か番組やコンサートなどで演奏して頂いたりしているんですが、斎藤さんがこれを聴いて、「いい歌を唄うようになったな」って言って下さったんですよ(笑)…私はそれが嬉しくて。ギター一本じゃないですか? それで斎藤さんからそんな風に言って頂けたことが嬉しい…先ほど棚橋さんから、「歌がうまいですねぇ」って言って頂けたように本当に嬉しい一言なんですよ。しかも斉藤さんはいろんな方のバックで演奏して来られた方ですからその褒め言葉が嬉しくて。何とかこれの発売に向かって行かなければいけないなぁと思っているところです。
──ギター一本ですから歌も丸裸ですものね?
そうそうそう、でもほら、自分で自由に唄うのと違って横に斉藤さんがいらっしゃるという緊張感ってありますからね。
──なるほど。もう少しお時間いいですか?
もう、全然大丈夫です。今、たっぷり時間はあります。
──性格的にステイホームは好きですか、それとも外に出ないとおかしくなるタイプですか?
私ね、家が好きなんですよ。
──じゃあそんなに辛くないですね?
そう、本当にこの一カ月半、ほんの少しの人としか会ってないんです。マネージャーさん…近所にいるヘアメイクさん、あと、二葉先生にお届けものをする時に2回くらいお会いしたくらい…。
──で、歌のレッスンはちゃんとされていると?
はい、やっています。
──練習をしてない時は何をしていますか?
お三味線の練習とか…あ、映画はよく見ます。もう、25~26本は見たんですけど…本はちょっと読むと眠くなる。マッサージ機にかかる時おんなじです…もう、おばあちゃんみたいですよ(笑)。
──(笑)映画は何が良かったですか?
まず、この前共演した太川陽介さんが『グリーンブック』がいいよと言って下さったので…。
──アカデミー賞を獲った音楽系映画ですね?素晴らしい作品です。
そう、それから『最強の2人』…。
──身体の不自由な富豪とその介護人を描いた作品ですね。これも素晴らしい作品です。
そう、本当にこれも素晴らしかった。あと、『ビューティフル・マインド』も良かった…。
──何か、映画三昧ですね?
(笑)はい、評価の星の数が出てるでしょ? それを基準にしつつストーリーも見て決めています。意外とアクションものも──『ジョン・ウィック』なんてハマっちゃって3話まで見ちゃった…ピストルの撃ち合い、殺し合い…もうね、身体に悪いんですけどハラハラドキドキ感がボーっとした生活の中で刺激がありました。また、昔見ていたビデオを見てみようと思って見てみたり。
──しかし、ステイホームを謳歌していますね?
そう、だから1日があっという間ですよ。何もしていないような気もするけれど……種から植えたキュウリやナスやトマトを成長するのを毎日見ていたり。というか、私の家のベランダには何の木も花もなかったんです。というのも常に家にいないから生き物はダメにしちゃうなと思って控えていたんです。1カ月公演で東京にはいないっていうのが続いたりするでしょう? だから一切そういうものは置いてなかったんです。で、去年、明治座公演で頂いたブーゲンビリアをこの冬寒い中、放ったらかしにして枯れさせてしまって。どうせ花なんか咲かないだろうと思っていたら芽が出てきたんですよ。今はもうピンク色になって。こういう機会じゃないと出来ないと思ってディノスでガーデニングセットやパラソル、椅子とテーブルまで買っちゃったんです。それでお花を見ながら読書をしようと思ってやってみたら眠くなっちゃって(笑)…。
──本はダメなんですか?
いやいや、それでも読んでいますよ。湊かなえさんの『落日』や安住紳一郎さんの『話すチカラ』など5、6冊くらい読んでます。
──こういう機会はそうはないだろうと楽しんでおられますね?
そうなんです。だから何だかんだ言って1日があっという間に終わっちゃうんです。
──食事はどうされているんですか?
私は朝がっつり派なんですよ。朝、ガーデニングをやってから食事を作って食べるのが11時とか11時半くらい。次は夕方におつまみを2~3品作って…お酒は1日二杯までと決めていて。メニューですか? 今日はイタリアン、明日は和食だとか、大体決まってきますね。食事はちゃんとしていますよ。
──作られるのは坂本さんですか?
勿論です。
──さすがです。しかし、この状況がいつまで続くんでしょうかねぇ。
東京はとりあえず今月(5月)一杯は緊急事態宣言が出ていますが、実際それが解除され、のちにコンサートがやれるようになったとしても皆さん会場に足を運んで下さるだろうかって。それが一番心配ですよね。
──6月の岡山公演以降は一応スケジュールはアップされていますからね?
いや、何かあったら取り返しがつかないですから、正直そこはズレてくれた方が有難いと思っています。だけどそれを秋以降にズラしたとしても…第二波が来ました、また延期で冬が来ましたなんて言ったらコンサートはいつ再開出来るのか? っていう。まだクエスチョンですよね。
──死活問題ですよね?
勿論です、本当です。年が開け、それこそまだコンサートが出来ないなんて言ったら…色々売りさばいて食べて行くしかありません(苦笑)。
──(苦笑)それ以上に演者のストレスは…。
そう、勿論それがあります。でもね、私が今回ショックだったのが……私はあまりバラエティには出ない。とにかく生のステージ、生の舞台を一番に考えてきたんです。でも、そこからまず排除されたじゃないですか。お客様が密集しちゃうからしょうがない。でも、テレビは映像が残っているから再放送。CDという音源はある。それでいいなら生身の私は必要ないわけですよ。
──確かに極論を言えば…。
そう、極論を言えばね。例えば震災の時も自粛ムードにはなりました。でも、私達が身体ひとつで被災地に行ってア・カペラで唄い、お客様と握手をするということが出来た。でも、今回のコロナは人に触れちゃいけない。近くに行っちゃいけないんです。必要じゃないってこと……これが一番私はショックでした。コロナ収束の後は生活様式が変わります。私達エンターテイメントもどんどん変わっていく。そうなった時にどういう方向性で唄って行けばいいんだろうって……何処を一番に、何を大事にやって行けばいいんだろうと考えたら本当に(言葉をのむ)……能天気にYouTubeをやっているくらいはいいんですよ。だけどあれだって半分は泣く泣くやったこと…ファンの方に喜んでいただこうとの思いでしたから。実際の本格的な仕事の再開というかコンサートの再開を考えると…ちょっと不安だらけですよね。
──お客さんを前にするコンサートはお互い不安がありますよね?
そうです。実際2メートルずつお客様の間隔を開けましょうなんて──そしたら大きなキャパにどれくらいのお客様が入るかはわからないけれど、今の形でやっている私達は呼んでもらえなくなります。大所帯で行くことが出来なくなりますからね。ウチのスタッフ、バンドさんは仕事をさせてもらえない。みんな食べて行けなくなっちゃう。それは私達だけじゃなく、皆さんも苦しんでいますからね。本当にこの状況がいつまで続くのか…早くて来年なのか、何年後かなのか……全く予想がつきません。
──アーティスト同士で話し合ったりするなんてことはないんですか?
よくお電話下さる方はいます。いろいろ話はしますけど、とにかく皆さん不安だらけ。やはり皆さん、自分のところに社員を抱えていますからね。自分が唄えないということもそうなんだけれど、抱えているものが大きいので、そういう不安も沢山持っていますよね。本当に死活問題。食べて行けるかしらってところまで来ていると思います。これが半年、1年続いたらどうなるんだろうっていうね。
──私達も自粛警察にいろいろ言われることもあって参っています。少しでも雑誌やウェブに、「お花が見頃です」とか、「新しいパン屋さんが出来ました」なんて記事を掲載すると、「今のこういう時にそんな記事を載せるなんて…」なんて言われこともありますからね。
ああ…それを癒しと思ってくれるか、そうじゃないかですよね。人によっては、そんな花なんか見る余裕ないよってことですねぇ…。
──「♪~赤いリンゴにくちびるよせて」という『リンゴの唄』に勇気をもらって戦後の苦難を乗り切ったという歴史もありますからね。元来音楽とはそういうものだと思うんですよ。
うんうん、そうですよね。そうあって欲しいです。
──今年後半、アルバムやら何やら、いろいろ考えていたことがあったんじゃないですか?
そう、ちょっとね、いろいろ考えていたことがあったんですよ。だからどうなって行くんでしょう(苦笑)…。そして私、来年が35周年になりますから、それに向けて少しずつ動いて行かなければならないんですが…焦ってもしょうがない、ジタバタしてもしょうがないかなって。なるようにしかならないと思っています。
──35周年の頃には何か取材でお手伝いさせて頂ければと思っております。
はい、その時は真っ先に…直にお会いできればと思っています。■
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