1717年の創業から昨年で300年を迎えた青木酒造は、新潟県の地酒に多いといわれる、淡麗辛口の味わいとは違う、旨口の日本酒を醸し続けてきました。
今回、蔵の紹介でご登場いただいたのは長年造りをけん引してきた製造部長の今井隆博さん。継承されてきた味と酒造りへの想いを伺いました!
「当蔵の代表的な『鶴齢』の味をひと言で表現すると〝淡麗旨口〞。豪雪地である魚沼地域では、塩気のきいた保存食や肉体労働者が好む味の濃い料理が好まれてきました。それらに合うのは淡麗のお酒より、うまみのある芳醇な日本酒。日常酒として、飲み飽きしないということも意識しています」
ちなみに「鶴齢」と命名したのは地元出身の作家・鈴木牧之。彼の次男・弥八が7代目だったことから、名付け親となったそう。
次に造りについて聞くと、今井さんは米の銘柄に強い関心があるとのこと。
「鶴齢には長岡産の越淡麗をおもに使用します。新潟発祥のこの酒米は味がふくらみやすく、すっきりとした酒質になるんです。毎年約3000俵(約180トン)を使っており、おそらく県内で一番の使用量ではないかと思います」。
そして越淡麗100%を使用したお酒のなかで、注目の1本がこちら!
また創業300年記念事業として昨年、「鶴齢の雪室」を設立したのも大きなトピックです。
「約400トンの雪を貯蔵し、その冷気を活用しています。安定した温度帯で保管・熟成ができるため品質の向上に大きく影響しました。青木酒造に関わるお客様、米農家さん、酒販店さんに認めていただけるよい酒造りを、今後も続けていきたいですね」。
今、新エネルギーとして見直されてきている雪室。野菜や日本酒、肉など貯蔵する食品によって適した構造があるようで、青木酒造ではその仕様を研究し、いくつかの温度帯に部屋を分けて作り上げたと言います。
牧之通りから徒歩5分ほどのところにあります。
雪室の周りもきれいに舗装され、仕込み水と同じ清水が流れる小川を設けた庭や雁木など、南魚沼らしい景観が広がります。
そして、手前のシャッターに大きく描かれたイラストが気になります!
「これは鶴齢とは対照的な辛口の酒シリーズ『雪男』のラベルに描かれたキャラクターです。約30年前にからあるシリーズなのですが、数年前にラベルを一新しました。鈴木牧之の代表作「北越雪譜」に登場する毛むくじゃらの怪物をモデルになっているんです。
山中に迷い込んだ人間を助けるエピソードがあり、これになぞらえて売上の一部を山岳救助に寄付する「雪男プロジェクト」が8年前に始動しました。
登山家が多く、また山菜採りが盛んな土地柄のため、毎年山に関わる事故が多い南魚沼。この寄付金が、案内看板の作成や実際の救助に役立てられています」。
そして6月、地元警察からその功績が讃えられ、感謝状が授与されたそうです。
南魚沼の食と人に寄り添い、そして酒を通していろんな場面で貢献する青木酒造の今後はどんなお酒が登場するのか、どんなニュースが飛び出してくるのか、とても楽しみですね! 皆さんも、ぜひご注目を~
[青木酒造]
南魚沼市塩沢1214
tel.025-782-0012
酒蔵見学:不可
直販:来店・電話・インターネット