2月7日(金)から全国で公開が始まる、日本のロックバンド・爆風スランプの名曲からインスパイアされた映画『大きな玉ねぎの下で』。
本作品で主演を務めるのは、ミステリアスな役柄からさわやかな学生役まで、幅広い演技で注目を集める俳優・神尾楓珠(かみおふうじゅ)さん。
映画の公開前に、作品の内容や、映画にまつわる神尾さんご自身のことについてもお話を聞きました!
ストーリー
夜はバー、昼はカフェになる店・Doubleでそれぞれ働いている丈流と美優。同じ場所にいるのに会ったことがないふたりを繋ぐのは、連絡用のバイトノート。顔も知らないまま、ふたりは日本武道館の「大きな玉ねぎの下」で会う約束をする。一方30年前、同様に顔を知らない文通相手との恋があった。時を超えたふたつの恋が交錯し、やがてひとつの奇跡が…。いつまでも心に残る「あの恋」を紡いだ名曲ラブストーリーがここに誕生した。
誰もが知る名曲を題材にした作品を映像化
——映画『大きな玉ねぎの下で』の主演に選ばれた時、どんなお気持ちでしたか?
神尾・タイトルにもなっている爆風スランプさんの曲はもちろん知っていました。それが映像になるなんて! どんな内容になるのかワクワクしましたね。
草野翔吾監督とは、2021年12月に公開された映画『彼女が好きなものは』でご一緒して以来だったので、また選んでもらえたことが何よりうれしかったです。誰もが知る名曲を映画化するということと、草野監督に対する「前作の印象を超えたい」ということのふたつのプレッシャーがありました。
——今回共演された、女優・桜田ひよりさんとは初共演ですね。
神尾・そうですね。年齢は下ですが芸歴は僕よりずっと長いので、出演作はもちろん観たことがありますし、「どんな方なんだろう?」と共演を楽しみにしていました。ほかの共演者の皆さんも豪華で、そのなかで主演をさせていただく緊張感はとてもありましたね。(父親役に原田泰造さん、母親役に西田尚美さん)
——最初に台本を読んでみて、どんなことを思いましたか?
神尾・僕が演じた丈流は大学4年生で周囲と同じように就活中だけど、将来に希望が持てずに悶々とした悩みを抱えています。作品中では、冒頭からいきなり丈流のひねくれた性格が全面に出るセリフがあって、すごく嫌な奴という印象的があったのを覚えています。
——曲に対しての印象もお聞かせください。
神尾・タイトルが先行すると少しコミカルなイメージですが、爆風スランプさんの『大きな玉ねぎの下で』の歌詞はしっかり読み解くと実は切ない曲なんです。役作りのため、毎日聴いて、歌詞を自分の体に染み込ませました。
大学生・丈流は、少し前の自分に似ていると思うんです
——丈流を演じるにあたって、特に意識したことはありますか?
神尾・まず、草野監督と「丈流」のイメージを共有することが大事だと思いました。前回の草野作品ではしっかりキャラクターのある役でしたが、今回の丈流はオリジナルで等身大の大学生だったので、役へのアプローチはまったく異なるものでした。監督からは「あんまり作り込まないでほしい」というリクエストをいただいていたので、僕も役作りを意識せずにフラットに演じました。監督と自分のなかで「丈流像」が共有できたのがよかったと思います。初共演のひよりちゃんや、ほかの演者の皆さんにも伸び伸びと演じてほしかったので、なるべく現場がいい雰囲気になることも意識しました。
——作品では交換ノートのようなやりとりがありますが、神尾さん自身で書かれていますよね。
神尾・普段、手紙を書くことはほぼないので、演じながらあんなに文字を書くのは初めての経験でした。字にはやっぱり個性というか癖が出るので難しかったです。映画館のスクリーンで大きく映るのでキレイに書かなきゃといけないと、実はかなり練習しました(笑)。
——丈流を演じていて、自分と似ているなと思う部分はありましたか?
神尾:冒頭に出てくる丈流のひねくれた性格がよく分かるようなセリフを読んで、少し前の自分によく似ているなーと思いました。あの気持ち、すごい分かるんです。
——神尾さんにもひねくれていた時期が…?
神尾・丈流は就活に一生懸命になれず、斜に構えて友人に意見したり、頑張っている人を馬鹿にしたりするようなところがありました。僕も高校時代、何かに一生懸命に取り組む友人を見て、ちょっと冷めた目で見るようなところがあったんです。だから、その気持ちがすごく分かるというか。家では一生懸命テスト勉強するんだけど、みんなのいる学校ではやらないみたいな(笑)。頑張っているところを人に見られるのって恥ずかしいし、その苦労している姿を人に見られることが苦手だったんだと思います。
——神尾さんは、その時期をどのように克服したんですか?
神尾・少しお休みをいただいた時期に、地元の友人に会ったり、父の仕事を手伝ったりしていました。地元には中学時代の同級生がいるので昔の話をしているなかで、部活も勉強も必死に頑張っていた頃の自分の気持ちを思い出したりして、自分にも一生懸命な時があったなと自信がついて、また頑張ろうと思えましたね。
世代ならではの悩みに向き合い、神尾楓珠さんが今思うこと
——同世代の共演者が多い作品ですが、印象に残っていることはありますか?
神尾・丈流の友人役を務めた中川くん(中川大輔)とは初共演でしたが、彼とのシーンはかなり印象に残っています。「こんなふうに演じてくるかな?」と想定していた場面で、毎回想像を超えてくるんです。癖が強く、演じている姿がめちゃくちゃおもしろかったです。同じく友人役を務めたあさひ(伊藤あさひ)とは一番仲のいい友人なので、彼の大学時代の雰囲気を意識し、同世代共演を楽しめたかなと思います。
——恋愛にも将来にも悩む等身大の大学生を演じられてみて、いかがでしたか?
神尾・丈流を演じてみて思ったこと、それは人生において焦る必要はないんだということです。「いろいろな選択肢に直面して、うまくいかなくてもまたやり直せばいい」って、悩んでいる時には気付けないことですよね。就活だったり大学生活だったり、この世代はぶち当たる悩みが多いけれど、人生において一回しかない選択だとは思わなくていいと思っています。
——最後に、『大きな玉ねぎの下で』を鑑賞される方へメッセージをお願いします。
神尾・名曲『大きな玉ねぎの下で』を映像化するうえで、その世界観を一番大切にしたいと思い、役に臨みました。恋愛映画だけど、それだけでなく、生きていくうえで前向きになれる言葉が作品の随所に散りばめられていて、誰かの気持ちが救われるような作品になっていると思います。昭和と平成で、もがきながら一生懸命に生きる登場人物それぞれのストーリーにもぜひ注目していただけたらうれしいです。
神尾楓珠
かみおふうじゅ/東京都出身。日本テレビで放送された24時間テレビドラマスペシャル『母さん、俺は大丈夫』(2015年)で俳優デビュー。 その後、数々の話題作に出演。今作の草野監督とは、映画『彼女が好きなものは』(2021年)に続き2作目となる
映画『大きな玉ねぎの下で』
出演:神尾楓珠/桜田ひより
山本美月/中川大輔/伊東蒼/藤原大祐/窪塚愛流/瀧七海
伊藤あさひ/休日課長/和田正人/asmi/飯島直子
西田尚美/原田泰造/江口洋介
監督:草野翔吾
脚本:髙橋泉
原案:中村航
音楽:大友良英
配給:東映
新潟県内7ヵ所の劇場で2月7日(金)より公開