新潟市沼垂にある写真集中心の新刊・古書の本屋、ギャラリーBOOKS f3の今年最初の展示は、長岡造形大学で教鞭をとっている写真家・山田博行の写真展です。

山田博行は1972年、新潟県出身。
武蔵野美術大学造形学部映像学科を卒業後、写真家として活動するほか、広告やTVCFも手掛けています。

『CABIN』は、作家の空間や時間の記憶につながる窓の体験の記憶をたどり、記憶から景色を描写するという試みのもと、人は何を見ているのか、何を感情として記憶するのかをテーマに制作された作品。
窓の外に佇む静かな自然の気配を考慮し、空間の気配を探求した結果が、写真表現の焦点を再考する独特のアプローチにつながっています。
明るく平滑で抽象的な作品からは、あふれる光や葉の擦れ合う音などの自然が有機的なイメージと漂い、作品を飾るという行為を再構築して、窓からの風景を疑似的に表現しています。

BOOKS f3店主・小倉さんは、「自分自身も世の中も揺らいだ2020年。不確かな感情を行き来しながら頭に浮かんだのが山田博行さんの『CABIN』シリーズでした。曖昧な視点はどこか今の状況のようで、その定まらない視点の先はそれぞれの思考へとつながっている気がします。2021年に入っても状況はまだ好転しません。ならば今は、はっきり形あるものを提示するより、そこに佇むぼんやりとした景色を眺めてほしい」と今展を開催することになったいきさつを語っています。

ぜひ会場で、作品に収められたそれぞれの窓から見える景色、記憶を確かめてみてください。