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浅妻 信のサッカーフリークエッセイ

FOOTBALL JUNKIE 【アンチフットボールを演じた日本代表】

FIFAワールドカップ グループH ●日本0-1ポーランド

  • 情報掲載日:2018.06.30
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。
写真は6月30日。アルビ対水戸ホーリーホックの様子
写真は6月30日。アルビ対水戸ホーリーホックの様子

日本代表がグループ突破を決めたポーランド戦の終盤、負けているにもかかわらず攻撃を放棄する日本代表の姿を見て、2016シーズンのJ1最終戦を思い出したアルビサポーターは少なくないだろう。

得失点差での残留を選び、絶対勝たなくてはならないホーム最終節の広島戦で、負けている段階で、突如、攻撃を放棄したあの試合だ。

ポーランド戦で言えば、残り10分で自分たちが失点しない(2点差にされる)ことと、コロンビアが失点しない(同点にされない)ことを天秤にかけ、後者の方の可能性が高いと判断したことになる。
見方を変えれば、自分たちよりもコロンビア代表の方を信じてしまったともいえ、
もとより、「フェアプレーの精神にのっとり、正々堂々と戦うことを誓います」という選手宣誓を金科玉条のごとく心にすり込まれてきた我々日本人にとって、ダブルのアレルギーとなり、賛否両論が巻き起こっている。
そして、この日本を決勝トーナメントへと導いてくれたのがフェアプレーポイントであったことも実に皮肉だ。


どちらの立場に立つかは、そもそもサッカーの試合に何を求めるかで変わってくることだろう。
非日常の感動を求めているファン層にとっては失望しかない。
苦しい時間帯を耐え、同点ゴールを叩き込み、日本サッカーの強さを世界に知らしめるシーンに快哉の叫びを上げることをどれだけの人が楽しみにしていたのか。

ましては、この日のポーランド代表は大して強くなかった。
この感動なくして、結果だけを求めるならば、それは株取引とどういう違いがあるのか。

アルビの最終節や遠くロシアの地に、相当な覚悟をもって駆けつけたサポーターにとって、それもサッカーだと言い諭せる自信は私にはない。


一方、決勝トーナメントに進むことを目的とするならば、確率論として他会場で戦うコロンビアに運命を託したことは、実際、日本とメキシコ以外は、ヨーロッパと南米の寡占状態になっている現状をみても、英断というしかない。

文字通り、どの試合も世界の耳目を集める決勝トーナメントこそ、ワールドカップの本番。
その舞台に立てる喜びと経験は何事にも代えがたい。

数年経てば、いかに素晴らしい戦いをしようとも、日本以外の国の人から、ロシアでのサッカー日本代表の戦いの記憶は消える。
しかし、ここ6回で通算3度目の16強入りという結果は残る。

一応、サッカー協会の端くれにいる私としては、偉そうな物言いになってしまい恐縮だが、16強という結果の持つ意味が、皆さんの想像より少し大きいことは知っている。
未来への投資。日本サッカーが将来世界のトップ10に入るためには、よりよりマッチメイクと育成年代の強化のための豊富な資金を要するが、その中・長期的な視野からも、A代表は、最優先で結果を求められる特別な存在なのである。

忖度ジャパンとも揶揄される今回の日本代表。
その舵取りを任された西野監督の苦悩は、当事者でなければわからないだろう。

決勝トーナメント初戦はベルギーである。
ポーランド戦のおかけで、このベルギー戦にいいところなく負ければ、あの素晴らしかった2試合を含め、世界中から、西野ジャパンの全てが否定される可能性を孕んでしまった。

そこまでのリスクを冒して勝ち取った夢の舞台。
そこには一体どんな景色が待っているのだろうか。

今はただ、その景色を見られることに感謝しようではないか。

【浅妻 信】
新潟市出身。Jリーグ昇格時からアルビレックス新潟を追い続けるとともに、本業のかたわら、サッカー専門誌などに執筆している。さらにASジャミネイロの監督としても活躍中

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