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棚橋和博音楽コラム 僕にとってのロック名盤八十八作品

【第16回】『シート・ミュージック』10CC

これぞ英国生まれのセンス溢れるバンド、10CC。 オペラかミュージカルか? と思わせといて、 ビートルズ直系のロックも感涙バラードも聴かせるニクい奴ら。

  • 情報掲載日:2018.10.19
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。
『シート・ミュージック』
『シート・ミュージック』

高校生の頃は特にブリティッシュロック=イギリスのバンドにぞっこんでした。
T-REXやデヴィッド・ボウイを筆頭とするグラムロックや、
イエスやクリムゾンなど、クラシックやジャズの要素を取りれたプログレッシヴ・ロック、
ギターの可能性を追及・開花させた三代ギタリスト、ジェフ・ベック、エリック・クラプトン、
レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジなど、アイデアと革新に満ち溢れたロックは、
英国生まれがほとんどでした。ザ・ビートルズ生誕の国ですから、当然のことですね。

さて、今回紹介する10CC(テンシーシー)は、まさに英国らしさ溢れるバンドです。
エリック・スチュアート、グラハム・グールドマン、
ケヴィン・ゴドリー、ロル・クリームの4人からなるこのバンド、
『10CC』『シート・ミュージック』『オリジナル・サウンドトラック』
『びっくり電話』という4作をリリースしたのちに、
エリック&グラハムが10CCを名乗り、
他の2人はゴドリー&クリームを名乗るという形で分裂してしまいました。
元々それぞれ2人組でソングライティングすることがほとんどでしたから、
納得はしていましたが、それぞれのコンビの作る作品は、そのバンド名にあやかり、
「5CCって感じだね」と皮肉られることも多かったですね。

『10CC』
『10CC』
『シート・ミュージック』
『シート・ミュージック』
『オリジナル・サウンドトラック』
『オリジナル・サウンドトラック』
『びっくり電話』
『びっくり電話』

グラハム・グールドマンは若かりし頃からソングライターとしての才能が開花し、
ザ・ホリーズの『バス・ストップ』やヤードバーズの『フォー・ユア・ラヴ』など、
多くのヒット曲を量産するソングライターでした。
自らも68年に自作曲のカバー作『ザ・グラハム・グールドマン・シングス』をリリースしています。
エリック・スチュアートは19歳でウェイン・フォンタナ&マインド・ベンターズのギタリストとして
活躍するも、何と、ウェイン・フォンタナが抜けバンドは牽引者なきまま活動。
そこに助け舟を出す形でグラハム・グールドマンがソングライターとして参加します。
そこでエリック・スチュアート&グラハム・グールドマンの鉄壁のコンビの誕生です。
ビートルズ直系のロックンロールタイプの曲と、どこまでもとろけるようなメロウな曲という、
大きく分けてそのふたつの世界観を武器に持つ名コンビです。
10CCの名前を世界的なものにした『アイム・ノット・イン・ラヴ』は2人による楽曲。
幾重にも重ねたコーラスワークがお見事なこの曲は10CCの代名詞となりました。

『ザ・グラハム・グールドマン・シングス』
『ザ・グラハム・グールドマン・シングス』

さて、一方のケヴィン・ゴドリー、ロル・クリームの2人は、
サイモン&ガーファンクルのようなデュオでの成功を掴もうとしていたものの、
元々持っていたユーモア気質が災いしてか、なかなか成功を掴めませんでした。
ひと足早く成功を掴んでいたエリックとグールドマンは、
資金を出し合いストロベリー・スタジオを設立し、日夜創作活動に没頭。
そこに縁あって訪れたゴドリー&クリームはエリックと意気投合し、
ホットレッグスなるバンドを結成し『ネアンデルタール・マン』をリリースしたところ、
これが見事に大ヒット。アルバム『シンクス:スクール・スティンクス』も好評でした。
のちにグールドマンが3人と合体し4人の10CCが誕生するに至るのです。
なお、この頃、『おお、キャロル』でお馴染み、あのニール・セダカの『セダカズ・バック』には、
10CCの4人が制作に大幅に関わっている楽曲が多く収められている良盤。機会があったら是非聴いてみて下さい。

ホットレッグス『シンクス:スクール・スティンクス』
ホットレッグス『シンクス:スクール・スティンクス』
『セダカズ・バック』
『セダカズ・バック』

さて、そんな経緯を辿って10CCの4人は出会い、
『10CC』『シート・ミュージック』『オリジナル・サウンドトラック』『びっくり電話』の4作を産み落とすわけですが、この4作に優劣はつけられないほど、見事な作品ばかりです。
世間的に言うと大ヒット曲『アイム・ノット・イン・ラヴ』が収めらたれ
『オリジナル・サウンドトラック』の評価が高いのですが、
10CCというバンドの黄金期前期は『10CC』『シート・ミュージック』の2作、
黄金期後期は『オリジナル・サウンドトラック』『びっくり電話』の2作に分かれています。
前期はビートルズやビーチボーイズからの影響を受けたロックテイストに、様々な音楽要素をミックスさせた、上手なパクり精神万歳の、言わばキッチュな作品。
後期作品は、そのキッチュさは影を潜め、よりゴージャスな作り込み満載の、オペラか? ミュージカルか? と思わせる麗しさと逞しさ、ユニークさが溢れる作品です。
4作、どれも良いのですが、僕は、その前期と後期が少しずつミックスされた、2nd『シート・ミュージック』を一番に選びます。
ゴドリー&クリーム作の『オールド・ワイルド・メン』『ハリウッドのどこかで』は、
構成巧みな、どこまでも、どこまでも、果てしない美しい曲。
アルバム冒頭を飾るエリック&グールドマン作の『ウォール・ストリート・シャッフル』は、
キャッチー&ポップさ満載のロックンロール&メロウ曲。他の曲も本当にお見事です。

『シート・ミュージック』
『シート・ミュージック』

さて、10CCはふたつに分裂した後、
それぞれがそれなりに成功を収めます。
10CCを名乗りヒット曲も幾つか出したエリック&グールドマン。
ゴドリー&クリームはギターに装着しオーケストラのような音を出す
エフェクター、ギズモの開発に邁進し、遂には『ギズモ・ファンタジア』なる大作まで
完成させました。さらに、彼らはビデオ・ディレクターとして様々なアーティストの
プロモーション・ビデオを手掛けたりもしました。
今、10CCはグルハム・グールドマンひとりが牽引する形で活動を続けていますが、
他の3人はどうしているのでしょうか。あまり噂は聞きません。
『びっくり電話』以降、あのままの4人でもう1~2作アルバムを作れていたら、
さらにとんでもない存在になっただろうなぁと思います。
1977年にエリック&グルードマン率いる10CCは初来日を果たし、
そのライヴを見て感激はしたものの、やはり5CCだなぁとの残念な思いが残りました。
4人のライヴは見ることが出来ませんでしたが、4枚の傑作アルバムを
残してくれたのだから贅沢は言えません。
ちなみにグルハム・グールドマン率いる10CCですが、
2019年1月に来日し、東京&大阪のビルボードでライヴを行なう予定だとか。
うーん…グラハムの10CCかぁ……2.5CCな感じは否めません。
4人揃ってのライヴがやっばり見たかったなぁ。

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