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棚橋和博音楽コラム 僕にとってのロック名盤八十八作品

【第10回】『レット・ミー・ゲット・バイ』テデスキ・トラックス・バンド

今、世界で最も注目を集めるギタリスト、 デレク・トラックス。彼の存在でロックやソウルの未来に光が見える。

  • 情報掲載日:2018.08.13
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。
『レット・ミー・ゲット・バイ』
『レット・ミー・ゲット・バイ』
『レット・ミー・ゲット・バイ』(輸入盤2枚組デラックス仕様)
『レット・ミー・ゲット・バイ』(輸入盤2枚組デラックス仕様)

いやぁ、毎日、暑いですねぇ。
今年、2018年の夏は異常なほど熱い。
「命に関わる暑さ…」と、
あちこちで言われているように、
もうちょい、何とかならぬものでしょうか。

そんなわけで、ちょっとでも涼しい気分になりたいと、
ビーチボーイズでもお薦めすればいいんでしょうけど、
ここはひとつ、暑ければ辛いカレーじゃないですが、
逆にこってりとした音楽に身を委ねるのはいかがでしょうか。
こってりと言えば、サザンロックとサザンソウル。
サザンロックと言えばオールマン・ブラザーズ・バンド、
レーナード・スキナードがメジャーな2強。
そのルーツとなるのがサザンソウルです。
サザンソウルと言えばオーティス・レディング、
ジェームス・カー、O・V・ライトあたりの大御所がズラリと並びます。
しかし、これらの名前をズラリと並べると……
いやぁ、これは濃いなぁ…真夏にこれはキツいと思わずにはいられませんが、
これらを聴いてこそ、真の真夏が体験出来るという、
そんな魅力を放つのが南部のロック&ソウルなのです。

さて、そうと来ればオールマン・ブラザーズ・バンドの
1971年リリースの名作ライヴ盤『フィルモア・イースト・ライヴ』
あたりを書こうかと思ったのですが、いやいや、それよりも先に、
まさに現代の牽引者のことを先に紹介せねばならぬでしょう。
近年、サザンロックの歴史と看板をひとりで背負い、
さらにそこにジャズや民族音楽のテイストを加え現代で昇華させている、
デレク・トラックスのことを書かずにはいられません。
そんなわたくし、特に暑い、
今夏は彼の作品を聴く機会がグッと多くなっております。

デレク・トラックスはオールマン・ブラザーズ・バンドのドラマーである、
ブッチ・トラックスの甥で、9歳の頃からギターを始めています。
幼い頃からオールマンのライヴなんかのバックステージや
レコーディング・スタジオで走り回っていたのでしょうね。
しかも、デレクのギターに於ける得意技はスライド・ギターです。
スライドと言えばデュアン・オールマンです。
デレクが生まれた1979年には既にデュアン・オールマンは他界していましたが、
オールマン=デュアン・オールマンのスライド・ギターという印象は、
何十年経ても色褪せることはありません。それほど強烈な武器だったのです。
ブッチ・トラックスやメンバーからバンドやデュアンの歴史の
凄さを教えられたことも想像に難くありません。
ブルース、ソウル、勿論ロック、そしてジャズに至るまで、
様々な音楽とギターの技術を習得したことでしょう。
そして遂には10代後半からデレク・トラックス・バンドを結成し、
プロとしての活動をスタートさせます。2006年にリリースした、
『ソングラインズ』など8作ほどアルバムをリリースしています。

『ソングラインズ』
『ソングラインズ』

オールマン・ブラザーズ・バンドには既に10代前半の頃からゲスト参加し、
そして、1999年には正式メンバーとなり、約5年ほど在籍します。
そこで、デュアン直系のスライド・ギターを披露するに至るのです。
オールマン・ファンは涙を流したことでしょう。
まさに、デュアンの再来!! とも言うべき、ソウルやブルースをルーツに持つ、
泥くさい糸を引くような見事なスライドを弾くのだから当然です。

さて、デレク・トラックスは1979年6月生まれ。現在39歳になります。
オールマンとデレク・トラックス・バンドのふたつのバンドを並走し、
着実に技術と実績を積み重ね、そして現在、奥様であるスーザン・テデスキと、
テデスキ・トラックス・バンドを結成し今に至るのです。
2010年のフジロックにはデレク・トラックス&スーザン・テデスキ・バンドとして
参戦しています。のちに、このふたつのバンドをくっつけ、
テデスキ・トラックス・バンドとなるわけですが、
それが見事に成功しました。

ボニー・レイットのようなハスキーボイスでソウルフルな歌を聴かせる
スーザン・テデスキとブルース&ソウル・テイスト満載のデレク・トラックスの
ギターの相性は抜群です。さらに、ホーン・セクションやコーラス隊を含む、
大所帯バンドの迫力は、他の追随を許さぬ圧倒的な存在です。
スタジオ・アルバムは2016年にリリースした、
『レット・ミー・ゲット・バイ』が最新作。
これが本当に素晴らしい。個人的な必聴曲は1曲目の『エニハウ』と
7曲目の『クライング・オーヴァー・ユー/スワンプ・ラーガ』、
ラスト、10曲目の『イン・エヴリィ・ハート』です。
いやいや、全曲、聴き処満載のアルバムなんですけどね。
『エニハウ』は、ジャムバンドっぽいアドリブ的イントロから、
デレクの弾く軽いリフにスーザンの声が絡み、ゆったりと動き出します。
しかし、そこからコーラス隊、ブラスが加わり、どんどん熱を帯びて行きます。
もう、後半はデレクのスライド弾きまくりで昇天するという、とんでもない曲です。
『クライング・オーヴァー・ユー/スワンプ・ラーガ』は
ゆったりとしたポップな曲かと思いきや、ストリングス、コーラス隊が加わり、
サザンソウルの世界へ突入です。で、最後にはまたまたデレクのソロへ…。
スタジオでセッションするかのような一発録りの雰囲気が堪能出来ます。
『イン・エヴリィ・ハート』はスーザン・テデスキの歌とゴスペル・コーラスの相性が感動的です。

テデスキ・トラックス・バンドはこのアルバムを引っ提げての
ツアーをライヴ録音した『ライヴ・フロム・ザ・フォックス・オークランド』
を昨年、2017年にリリースしています。

『ライヴ・フロム・ザ・フォックス・オークランド』
『ライヴ・フロム・ザ・フォックス・オークランド』

『レット・ミー・ゲット・バイ』と共に、こちらも必聴でしょう。
こちらはCD2枚とライヴ映像をシューティングしたブルーレイとのセット、
3枚組輸入盤のゲットをお薦めします。日本盤にはブルーレイはついていませんよ。
年齢的には未だ若いデレク・トラックスが、
これからどんな成長を遂げて行くのか、楽しみで仕方ありません。
ちなみに、公式ウェブサイトによると、
彼らは『レット・ミー・ゲット・バイ』に続く新作を準備中とのこと。
さらにこの公式サイトでは、昨年、2017年11月18日、
ライヴ盤と同じ、オークランドのフォックスシアターで演った、
ニール・ヤングのカバー『アラバマ』を聴くことが出来ます。
これがまた、凄いのなんのって…。

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