ひだりみぎ よこ パーソナルジム
  1. Home
  2. スペシャル
  3. FOOTBALL JUNKIE 【怖いのは慣れである】

浅妻 信のサッカーフリークエッセイ

FOOTBALL JUNKIE 【怖いのは慣れである】

2018年7月22日 山形戦 〇2-1

  • 情報掲載日:2018.07.24
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

シーズンの約6割、24節を終わって、8勝11敗5分、16位というのが我がアルビレックス新潟の成績である。

決して皮肉を込めて言うのではない。
仮にも昇格、いや優勝候補とも言われたチームが、この時期、この成績で、監督解任などの声がほとんど囁かれていないのは極めて異例ではないか。
選手層の薄さで苦しんでいたJ1リーグの時代の話ではない。
選手の陣容自体は、去年と同等、いや、ゴールキーパーなどは明らかに強化されており、J2リーグではどう贔屓目に見ても戦力上位だ。
それが、昇格どころか、2年続けての降格を危ぶみ、論じる方が現実的な順位に甘んじている。
ちなみに、昇格した2003年の同時期は、15勝5敗4分である。勝ち点差にして20。これをどう見るか。

私は決して解任派の急先鋒に立とうとしているのではない。

怖いのは慣れだ。

ここ数年続く負け試合の連鎖にサポーターもメディアも飼いならされてしまったのだろうか。
かく言う私も、先日の松本戦。テレビ観戦であるが、アルビレックスを応援していて初めて、2点目を取られた瞬間に、試合途中で見るのをやめてしまった。

繰り返すが、この状況で監督交代などの意見がメディアからもほとんど出ないのは、民主国家に住む人間としては異様に思える。


現場が試行錯誤を繰り返しているのはよくわかる。
出場メンバーの組み合わせはもちろん、システムも頻繁に変え、なんとか打開を図ろうとするも、不幸にしてこれが実を結ばない。
厳しい言い方をすれば、肝心の戦い方に変化が感じられないのだ。
以前から指摘しているように、パス回しも足元中心で、ワンタッチなどのスピードの変化もなく、ほとんどが2タッチ以上。
このスピードの緩さでは、ディフェンスの裏を狙うチャンスも少なく、攻撃にダイナミックさがなく、相手に怖さを与えない攻撃が続く。
そして縦に入れたボールをミスから奪われ、選手の距離間も中途半端に空いているものだから、プレスもかからず、カウンターから決定的なパスを通される。
これがシーズン序盤から今まで延々と繰り返されている「シーズンダイジェスト」だ。
このような王様の戦い方が許され、かつ、結果も出せるのは、世界でも限られたごく僅かなチームだけだと思うのだが、
そう思っていた矢先に、FC東京からパスの名手梶山選手を獲得したことが発表された。
あくまでも戦い方は間違っていないとの判断。
それならそれでも良い。
でも、個人的に、修正すべきところは、そこではないのような気がするのだが。


Jリーグが誕生して20年。
それぞれのチームにチームカラーという言葉が浸透し、新潟のDNAといえば、決してスマートな響きではないが、「ひたむきさ」で通じるようになってきた。
どんな時でもチームに暖かい声援を送るサポーターとともに、一体となって、最後まで諦めないでひたむきに戦う。
新潟のサポーターが見たいのは、王様のように、相手を上から目線で迎え撃つサッカーではないだろう。


その意味で、逆転勝ちした山形戦のラスト10分の戦いは、シーズンが終わって、あの試合が分水嶺だったね、という話で語り継がれるようになって欲しいと思う。

なりふり構わずゴールを目指し、文字通りラスト1プレーで決勝点をあげたこの試合。

スタンドでは試合後、泣いたまま席を立てなかったサポーターが少なくなかったという。

本当にこれで波は変わるのか。

 

 

P.S .
少し前の記事となりますが、アルビレックス新潟が特集されたこちらのコラムを紹介します。

奇しくも舞台は昇格した2003年。私も登場しております。

【浅妻 信】
新潟市出身。Jリーグ昇格時からアルビレックス新潟を追い続けるとともに、本業のかたわら、サッカー専門誌などに執筆している。さらにASジャミネイロの監督としても活躍中

関連記事